分子工学専攻

化学は物質の変換を扱う学問であるとともに、物性を電子構造・分子の配列と相互作用などとの関連で論じ、新しい機能をもつ分子や材料の設計を行う学問として、ますますその分野をひろげつつあります。分子工学は、原子・分子・高分子などが関わる微視的現象を対象とする基礎学問を支柱として、原子・分子・高分子の相互作用を理論的、実験的に解明し、その成果を分子レベルで直接工学に応用する学問領域です。

分子工学専攻は、工学部石油化学科福井謙一教授のノーベル化学賞受賞(1981年)が契機となって、それに関連する物理化学系講座(石油化学教室、工業化学教室、化学研究所)が協力し、一部独立する形をとり、1983年に京都大学大学院工学研究科における初めての独立専攻として創設されました。従来、学部教育組織に組み込まれていなかった分子工学専攻は、その後の大学院重点化に伴う工学部化学系教室の改組によって、化学系他専攻と並ぶ教育研究組織となり、現在は学部教育でも重要な役割を担っています。

分子工学専攻では、分子論的視野に立って、斬新な発想で基礎から応用への展開ができる研究者・技術者を育成することを目的として、新しい光・電子・磁性材料やエネルギー・情報関連材料などの開発のための基礎的研究を展開しています。その研究領域は、分子生物学的手法を用いたタンパク質の構造・機能解析、分子・分子集団や化学反応の理論解析及び理論設計、高機能の有機・無機材料の設計と合成、環境・人工光合成触媒などの高性能触媒の開発、有機太陽電池や光機能性有機材料の開発、光・電磁波や電離放射線と物質の相互作用による機能性材料の物性物理化学、ダイヤモンド等を用いた量子物質科学、物質のダイナミックスと流動変形特性の分子論的解明、有機デバイスの創製と基礎科学の構築、固体NMR による構造・有機デバイス機能相関の解明、電子と分子振動の相互作用の基礎理論とその制御に基づく機能性分子の理論設計、温室効果ガス削減のための分離材料開発など、物質の理解と応用の本質に関わる広範な分野をカバーしています。

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