ナノフォトニクスからナノメカニカルフォトニクスへの展開を目指して

田中 良典

田中 良典2007年12月1日より、工学研究科電子工学専攻を中心としたグローバルCOE プログラム「光・電子理工学の教育研究拠点の形成」の特定助教として研究を行っています。本プログラムでは、物理限界への挑戦と、新機能・新コンセプトの創出をキーワードに、光の自在な制御および電子の極限的な制御を目指す「光・電子理工学」の学術拠点の構築と国際的な人材育成を目指しています。私は、本プログラムの特定助教として、光を極めて小さい領域で自在に制御するナノフォトニクスを起点にしつつ、微小領域での光と機械的な力( メカニクス) の相互作用に着目したナノメカニカルフォトニクス分野への新たな展開を目指して研究を行なっていきたいと考えています。

光は高速・大容量の情報伝送をするうえで優れた特性をもっており、最近では各家庭にまで光ファイバ網が張り巡らされるほど光は情報通信分野等で重要な役割を担っています。しかし、LSI などの電気回路における電子の制御と比較すると、光を自在に制御することは難しく、光をより自在に制御することが、次世代の光科学の進展に不可欠であります。

現在、私はフォトニック結晶とよばれる光に対する人工結晶を光制御に利用する研究を行っています。フォトニック結晶は、光に対して「絶縁体」としての性質をもち、従来の材料では実現できないような光制御ができると期待されています。例えば、フォトニック結晶を利用すると、光の波長程度の非常に小さい空間に光を長時間とどめておくことができる、共振器と呼ばれる光の「箱」が実現できます。さらに最近では、フォトニック結晶自身の性質を動的に変化させることにより、共振器の閉じ込めの強さを自在に制御するということに成功しました。これは、共振器という「箱」への光の出入りを自在に制御することができることを意味し、光を一瞬の間止めておく新たな光チップの構築などへつながっていくといえます。

ナノフォトニクスからナノメカニカルフォトニクスへの展開を目指してさらに、将来はこのように光を極めて小さい領域で自在に制御することを足がかりとし、局在した光を利用した新たな展開を図りたいと考えています。特に、局在した光がもつ大きなエネルギー密度を利用し、機械的な相互作用に着目することで、高効率の機械光子エネルギー変換デバイス、光子エネルギーによるマイクロマシンの駆動などの新たな展開が期待でき、光の波長程度の極めて小さい領域における光学(フォトニクス)と力学(メカニクス)の融合が図れると考えています。私は今後、より自由度の高い光の制御、そして光と機械の融合という新たな分野の探求を目指して研究を行っていきたいと考えています。

(特定助教(グローバルCOE)光・電子理工学の教育研究拠点形成)