研究と教育と

湯本 高行

湯本 高行私は1998年4月に工学部情報学科に入学、田中克己 教授の指導を受けまして、2002年3月に卒業致しました。2002年4月から情報学研究科社会情報学専攻に進学、2007年3月に田中先生の指導の下、博士(情報学)を取得しました。2007年4月からは兵庫県立大学大学院工学研究科にて助教をしております。今回、卒業生紹介の依頼を受けまして、僭越ながら近況をご報告させていただきます。

現在、私が所属している研究室には、私を入れて3名の教員がおりますが、全員の専門が異なっております。そのせいもあり、学生の指導については着任の初年度から自由にさせていただいており、私と院生5名、学部生3名からなる、私のサブグループは、研究室内サブグループとしては比較的独立性が高いと思います。助教の私に、このような機会を与えて下さっている高橋豐 教授には大変感謝しております。私が学生時代に研究室に配属されたときには、田中先生が神戸大学から京都大学に移られたばかりで、私が研究室の1期生でした。研究室の立ち上げに立ち合うという経験が、現在の自分のサブグループの立ち上げや運営に役立っているように思います。

私の専門は情報検索およびWeb マイニングですが、アルゴリズムの高速化やスケーラビリティなどの追及よりも、エンドユーザが探しにくいと感じている情報を探しやすくしたり、Webページの閲覧を支援するような、どちらかと言えばアプリケーションに近い部分を主な研究対象としております。例えば、現在、学生と共に取り組んでいる研究課題としては、料理のレシピや半田付けのやり方などのハウツー情報のわかりやすさを使われている語や画像の有無などによって表現し、それに基づいてWebページを検索する手法や、Webページに含まれる語の間の関係から「Webページの怪しさ」(所謂、ネタ記事ではないか)を判断する手法の開発があります。田中先生のスタイルに倣って、私も学生に自ら研究テーマを設定させることにしています。前述のテーマは学生が自ら提案したもので、そのせいもあってか学生は意欲的に研究を行っています。

私の学生時代(の前半)は教育のことにはあまり関心がなかったのですが、研究室に配属され、研究室生活が進むにつれ、技術以外の面で学ぶことの多さ、そして大切さを実感するようになりました。研究だけではなく、教育にも携わるポジションに今いられるということに充実感を感じておりますし、幸運に思っております。しかし、私の指導している学生には、大学、企業を問わず、研究者を志す学生がほとんどおらず、また就職後にも研究内容が直接の業務につながらないという場合も多くあります。また、昨今の学生の就職活動の様子を見ると、大学(の教育)は学生にも企業にも信頼されていないのではないかと思うことが多々あります。そのような中で、学生の研究に対するモチベーションを維持し、研究を通してどのように教育を行っていくべきかは、私にとっての最大の関心事の1つです。この問いに対する答えを、研究と教育の両面から模索しながら、日々の活動にあたっているというのが私の近況です。

(兵庫県立大学大学院工学研究科 電気系工学専攻 電子情報工学部門 助教
(情報学科 平成14 年卒業))