機械工作室は相談室

佐藤 祐司

sato.jpg職歴を振り返ってみると、最初に某電機メーカのSEとして5年、次に転職して舞鶴高専の技術職員として5年、そして京都大学の技術職員として13年、すでに23年が経過しています。いまだに自分の中ではまだまだ若輩ものだと思いつつも、技術部の年齢構成を眺めると、ほぼ長老の部類です。

高専そして京大と18年間もの間、教育機関での機械系の仕事に就いています。高専では学生に対してほぼ毎日実習を指導することが大きな職務内容でした。京大でも実習を指導することがありますが、主に機械系研究室の実験装置の設計相談や加工が割合として大きく、その点が高専と大学の大きな違いです。

現在の職場である機械工作室いわゆる機械工場は、汎用フライス盤や汎用旋盤、ボール盤、平面研削盤、マシニングセンタ、ワイヤー放電加工機といった加工するにあたり十分な工作機械を揃えています。

その機械工作室は、物理工学科機械システム学コースの2回生を対象とした機械製作実習を行なっているときは多いときで学生が40名ほどで作業しますのでかなり賑わうのですが、普段は職員3名で広い機械工場で工作機械相手に黙々と加工を行なっています。

実習は夏季の3週間ほどですが、機械系研究室の対応は通年行なっており中でも繁忙期は、卒業を控えた4回生や修士2回生が最も実験を行う10月から12月です。

主に実験装置の部品の加工を行うのですが、手順としては、学生さんが図面を持ってきてその図面に沿って材料の発注を行なって各種工作機械を使用して仕上げていき完成すれば学生に連絡し依頼した部品を渡す、というような流れになっています。

中でも一番大事なのが学生さんが描く図面なのですが、持ってこられる図面はほぼ手直しされます。というのも、寸法が抜けていたり、加工出来ないところに溝があったり、というような不十分な図面がほとんどで、十分に相談や確認、いわゆるカウンセリングを行わない状態のまま加工してしまうと最悪やり直しをしないといけなくなったりします。また、必要以上に高価な材料を使用していたり、明らかに根本的に構造が間違ったりしていると、機械材料や機構学、などの基本的な機械工学関連の説明を行なって理解してもらうようにしています。たまに、実験目的を十分に理解してない学生さんもおり、特に研究室に配属されたばかりの4回生が多く、そのような時はこちらから実験内容を説明するときもあります。というのも、実験は代々の先輩方から引き継がれてくることが多いのですが、4回生で研究室に配属されてから修士2回生で卒業するまで3年間研究される間に我々機械工作室側も加工を通じて何を実験しているのか、何を必要としているのか目的などが見えてくるようになり、諸先輩方が卒業し引き継ぎがあまりされてなくても我々から説明するということが可能なのです。また、よく『先生にこうしなさいと言われたので・・・』という学生さんもいるのですが、往々にして指導教員の方の真意を理解出来ていないことが多く、そのような場合も諸先生方とも長い付き合いであるので研究の流れや考え方、強いては先生方の個性まで知っていたりしますのでそれらを踏まえてどのようなことを学生に指導したいのか、などを学生さんに説明したりもしています。

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機械工作室全景

その学生さんも十人十色いろんな個性の方がおられるので、それも見極めながら依頼に応じないとスムーズに相談が進みません。例えば、物事をはっきりと言葉に伝えることが出来て世間話にも乗ってくるような学生さんであればこちらも話やすいのですが、引っ込み思案でなかなか言葉が出てこないような学生さんだと強い口調で質問したりすると余計に引き込んでしまったりと、依頼をされるこちら側も結構気を遣います。

しかしそんな大人しい学生さんでも3年間研究室に配属されていると、研究という技術的な面での成長や、大人として成長など変化の度合いが見えるので、それも頼もしいなと親心の如く学生さんと接しています。

一見、機械相手の仕事だけのように見えますが実際は同じ機械工作室のメンバーと会話をし相談しながら協調して加工を進めないと上手くいきませんし、依頼に来る学生さんとも対話をしながらでないと良いモノも出来ませんし、やはり人と人との繋がりは大事な事だとつくづく感じます。

人づてに聞いた話ですが、、最近の学生さん達からの自分の印象は『怖い』と感じてる方が多いそうです。怖がられるのは良くもあり悪くもあるので、もう少しだけ柔らかく接しようと日々精進していきたいと思います。

(技術専門職員)