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新入生ガイダンス挨拶(2019年4月2日)

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工学部長の大嶋です。まず、皆さん、京都大学工学部への合格おめでとう。

ご臨席の学科長の先生方および教職員とともに、皆さんの合格を心からお祝いしたいと思います。

これから4年間、皆さんがどのように育つのかとても楽しみです。

さて昨日、新しい年号が令和(れいわ)と決まりました。皆さんは令和時代の最初の入学者となるわけです。新しい時代の到来のなかで大学生活を始める皆さん、緊張しているでしょう。でも同時に、わくわくしませんか?

皆さんの中には、工学をやりたいと思ってきた人、就職がいいから、と親に言われてきた人、偏差値上仕方なく来た人、いろいろいると思います。もしかして、こんなところ来たくなかったんだという人がいるかもしれません。どのような理由で入ってきたかは、もう過去のことです。いまさらとやかく言っても何も変わりません。いまからは、京大に入ってよかった、“工学に入ってよかった“と4年後あるいは6年後に思える未来志向で行きましょう。過去は思い出さずに忘れずに、でいきましょう。それが令和という新しい時代に乗り出すにふさわしい気持ちだと思います。

皆さんが選んだ「工学」は、その価値のあるところです。皆さんが選んだ工学は、いままで、人類の幸せのためにものを作り技術を創造してきた学問といえます。自動車・飛行機・高層ビル・携帯電話などの創造が何よりもよい例だと思います。これからも、衝突しない自動車、人工知能、ロボットなど、さまざまなものを創造して未来社会の創造に貢献していかねばなりません。なかなかおもしろい分野です。いや、これから将来、人類の生き方を決める重要でチャレンジングな分野だとも言えます。

皆さんは、Society5.0という言葉を知っていますか?Society1.0は狩猟、2.0は農耕、3.0は工業化、4.0は情報。このSociety5.0の社会では、デジタルと現実のつながった超スマート社会と言われています。ただ、もしかすると、IOT機器が威力を発揮して人々や物をつなぎ、ロボットやAIが多くの仕事を代替することになって、互いの顔が見えなくなるかもしれません。加害者を特定できないようなSNSでの誹謗中傷は、その始まりなのかもしれません。

AIが賢くなって、2045年には人間を凌駕するSingularityが起こるといわれているのは、聞いていますか? 私は、絶対そうはならない、そうあってはならないと信じています。AIは、コンピュータの世界です。A=B B=CならA=Cだというようなロジックが必要です。そのロジックは、人間が作らねばなりません。正しいロジックをコンピュータに与えないと大変なことになります。正しいロジックを作る責務を担うのは、皆さんです。

また、ビックデータやDeep Learningという言葉を聞いていますか?Deep Learningは多層の人工ニューラルネットによる機械学習です。それは、多くのデータから、一番近いデータを選び出すという作業ですが、正しいデータを与えないといけません。まずいフレンチレストランのデータを集めて、何か意味があるでしょうか?

だれが、ロジックを与えるのでしょうか、だれが正しいデータを機械に学習させるのでしょうか?

皆さんです。

スマホに身をゆだね、便利だねとそれでよしとしてしまっていては、Singularityは起こってしまうのかもしれません。先端的な科学技術にすべてを依存するのではなく、正しい倫理観にのっとった創造力を働かす必要があります。そういった社会でこそ、人々が触れ合い、人の機微を知ること、人間力が大切になると思います。

それができるのが皆さんです。皆さんは、最も優秀な人たちなのです。関西弁でいうと「かしこ」なのです。人間力をつけて機械と人間が美しく共存する社会を作ることができる人たちです。私たちは、皆さんにとても期待しています。

 皆さんの中には、人間力ってなに?と思う方がいるでしょう。胆力、包容力、魅力のある人間のパワーがそれなのかもしれません。それをつけるにはどうしたらよいのか?と思われる人もいるでしょう。

わたしは、次の言葉が皆さんを導いてくれると思います。「自重自敬」という言葉です。この言葉が書かれたプレートが、京大の総長応接室の壁に掲げられています。文字通り読むと、己を重んじ、自身の人格を敬うべしという意味だと思います。決して、自分のことだけを考えろという意味ではありません。自分を大切にしなさい。自分の価値と尊厳を守りなさいという意味です。

どうすることが価値を高めることになるのだ?!と思われるでしょう。大それたことをしろとは言いません。ちょっとしたことから始めましょう。「人への思いやり」を持ってほしいということです。

小さいことでいいのです。

● 電車に乗るとき、ドアの前に立たず、少し横に立ってあげて、先に降りる人を優先してあげる。

● 混雑しているところを歩くとき、スマホでゲームをしながら、ふらふら歩かない。

● 大きなリュックを背負って電車に乗ったら、そのリュックをおなかの前に持って乗り、
  あなたの後ろを、人が通りやすくしてあげる。

このようなレベルからでいいのです。ちょっとした配慮でいいのです。自分以外の人へのその思いやりが、自分の品格を高めていくのです。

さて、京大工学部には6つの学科があります。医療や創薬や情報など、学科の名前からだけでは想像出来ないような広範囲な研究が行われています。自分の夢や理想に合った研究室が見つかるものと思います。第1志望・第2志望で入った人、気にする必要はありません。工業化学の中にも物理的なことや数学的な研究をするところがあります。また、地球系のなかにも化学や物理的なことを研究するところがあります。必ず、自分に合ったところが今から見つかります。冒頭でお話ししたように、今からが大切なのです。未来創造してください。

これからの大学生活で、いろいろな人と出会ってください。そうして、人を思うこと、人の機微というものを学びながら、自分の高い人格と、これからの未来を創造していってください。京都大学工学部は、その場としてふさわしい「学びや人との出会いの場」だと思います。

若い皆さんには、自己の可能性を信じ、将来、日本を背負う工学研究者・技術者となることをめざして進まれることを強く願っています。この京都大学工学部は、皆さんが望めば、得られるものがいっぱいあるところです。皆さんが目標・理想に一歩一歩進もうとするなら、私たち教職員は、喜んでサポートします。

このことをお伝えして、皆さんへの訓辞の言葉としたいと思います。

改めて、おめでとう。未来創造してください。