No.62 (2014.10) / 紹介 / 激動のエネルギー業界

激動のエネルギー業界

塚本 達朗

塚本氏画像学生時代は工学部・物理工学科に在籍、その後エネルギー科学研究科に進学し、鉄鋼材料の精錬プロセスを研究しました。鋼材に対する品質要求の高度化および高純度鋼に対するニーズが高まる中、高炉で製造された溶銑から不純物を除く溶銑予備処理と呼ばれるプロセスの研究が注力分野の一つであり、私は鉄-燐合金系における燐の挙動を研究する役割を担当させて頂きました。必要な資材・試薬を自ら調達し、ゼロから組んだ装置を用いて実験も試行錯誤の繰り返し。振り返れば、知力・体力・忍耐力の全てが試される充実した研究の場であったと感じます。

卒業後は大阪ガスに就職しました。会社選びの決め手となったのは、学生時代の専門性が活かせることに加え、インフラ側からあらゆる産業を支えることができること。ガス事業というドメスティックな業種ながら当時グローバル展開を唱えていたことも魅力の一つでした。とはいえ、入社直後の正直な印象は、グローバル化というスローガンは事実としてまだお題目に近く、会社の末端まで浸透したものではないというものでした。しかしその後の事業環境の激変、特に北米シェールガスの台頭、東日本大震災などが引き金となり、更に電力・ガスシステム改革の議論が加速することによりガス事業の置かれる環境は今後も大きく変化していくことが予想されます。

入社後12年が経ちましたが、実に多様な業務を経験しました。はじめの5年間は国内ガス営業のバックオフィスでガスコージェネレーションシステムの販売支援を担当。現場の営業マンのための営業支援ツールの整備、発電機メーカーとの折衝、行政対応などが主な業務でした。その後、営業の現場に転属となり、阪神地区の機械金属、電機業種のお客様のガス需給契約の折衝、ガス拡販につながるバーナ、コージェネ、空調機器などの営業を担当。自由化の進展でサプライヤーを選べる時代となり、お客様視点で如何に省エネ、省コストが達成できるシステムを提案できるかが、選ばれる秘訣となります。現場へ入り込んで各事業所単位のプロセスを深く理解することで新規に提案するガスシステムと調和した提案が可能となります。現場に入り込むため日頃から専門知識の習得に励み、そして工程の全てを把握しようとする姿勢は学生時代に培われたものと感じる日々でした。

その次の転属はニューヨーク勤務でした。予期せぬタイミングと勤務地ではありましたが、私にとっては願ったり叶ったりの大チャンス。全く予備知識もない業務内容で突然新入社員に戻った気分でしたが、エネルギー下流分野と呼ばれる発電資産、配電・ガス配給会社といった事業の買収を5年間担当しました。海外事業の規模がまだ小さい時期に駐在を経験することは、感覚的にはある日突然会社の顔として矢面に立たされる感じに近く、プレッシャーの掛る局面が多かったですがその分お金で買えないような貴重な経験と人脈の形成ができたのではないかと思います。

駐在の最後の半年ほどと、帰国後の2年ほどはフリーポートプロジェクトと呼ばれる米国の天然ガス液化・輸出プロジェクトの検討チームでの役割を担い、さらには中東や欧米におけるエネルギー下流分野の案件開発を担当しております。今や海外と接触しない日がないくらい社内外との交渉や調整が行われております。前述の通り、国内でも2016年以降、段階的に電力・ガスシステム改革が予定されており事業環境の激変が目前に迫っています。国内外での激動のエネルギー業界で生き残っていくため、中長期スパンで事業環境を予測し、適切な対策を講じていくことが重要になります。私自身も人的ネットワークを大切にしながら日々自らの業務スキルの向上に努めたいと考えております。

(大阪ガス(株)資源・海外事業部)