学生と共に学ぶ

山路 伊和夫

山路氏画像気が付くと京都大学にお世話になって27年が経ちました。大学に採用される前は車両設計関係の仕事を少ししておりました。大学に採用されると研究室に配属され、学生実験や実習、演習等のお手伝い、研究室でのものづくりや実験等を担当することとなり、学生のそばに居る時間が増えました。

当時は何もわからないまま、見よう見まねで業務をこなすのが精一杯でした。そのうちにいろんなことに興味を持ち、自分自身もいろんなことに首を突っ込むようになりました。さすがに勉強嫌いの私も、周りの人たちのレベルに何とかついていくために切磋琢磨しておりました。少し余裕ができてくると、自分自身も研究課題を見つけて学生達と議論し実験する日々でした。

研究室は会社組織とは少し違います。学生達は1~3年間、長い場合でも6年間くらいのお付き合いで、毎年新しい学生が入ってきます。短い期間ではあるものの、所属する教員の色、研究室の色に染まる学生や全く馴染めず課題だけを無難にこなして卒業していく学生、何でもチャレンジしていく学生など十人十色です。小さな研究室の組織の中でも、まとまっている年もあればバラバラな時もありました。そして歳を重ねるごとに所属する研究室の卒業生の数は増え、今では約二百名が卒業し社会に飛び出しました。それ以外にお世話した他の研究室の学生や課外活動として協力している学生を含めるとかなりの数になります。

全日本学生フォーミュラ大会
全日本学生フォーミュラ大会

そんな中、10年ほど前からある課外活動に協力しています。学生達は1年間1つの目標に向かってほぼ毎日活動します。それは競技車両を売り出すというビジネスモデルを構築する、活きた「ものづくり」です。まだ工学の基礎・専門知識もない学生から、研究室に配属され基礎知識と自分の専門知識を持った学生が一つのチームとなって車両を設計し製作します。発足当初は「ものづくり」を行う環境もなく絵に描いた餅状態でしたが、当時協力いただいた教職員の皆さんの努力で活動を進めることが出来ました。

活きた「ものづくり」体験とは、Formula SAE®(国際統一ルール)に沿って、目標であるカテゴリーの競技車両を年間1000台作ることです。マネージメント力が必要となります。先ず資金を集め活動環境を整えます。実際には実車を1台程度しか作らないのですが、これをベースにシミュレーションしていきます。競技車両ですから当然速く安全に走る車両開発設計になります。そのためには多方面からの情報収集や基礎技術、製作能力を問われます。

「デザイン」「コスト」「プレゼン」「車両運動性能」「環境・安全」で争う大規模な競技です。人馬一体となって行動しなければ勝利することが出来ません。でも、まとまりが無いのが京大生です。チーム運営を上手く熟す事が難題です。初年度は何もわからないまま、ただ車両を完成し競技に出たいという意志でまとまりました。しかし技術と発想のレベルが高くなると年々まとまりません。やっとリーダの存在が大きい事に気づきます。それを繰り返すこと10年、念願の「総合優勝」を昨年勝ち取ることが出来ました。

当たり前の事ですが、指針を示し皆で協力し、リーダが舵をとる。其の場に学生と共に協力し見守り自分自身も成長出来たことに幸せを感じました。実際の職場でも同じではと思います。

よく言われる

「今どきの京大生・・・?」 

いやいや

「やるじゃないですか!!」

この活動だけではなく、学生の活躍する場は沢山有ります。一度覗きに行ってはいかがですか!

そこには普段見られない学生の「顔」が有ります。

私たち技術部は研究や教育をサポートし、学生達と共に成長できることを願っています。

(技術専門員 技術部設計・工作技術室)