同窓会組織:京都大学土木会(京土会)の今日までの歩みと活動

大西 有三

大西 有三京都大学は本年6 月で明治30 年創立から数えて110 年目を迎えます。京都大学の土木工学科も、京都大学と共に生まれましたので同じです。このときの京都大学土木会(京土会)の設立時の様子は定かではありませんが、当時自然発生的に生まれ、活発な活動を行っていたものと思われます。写真- 1 に、すこし時代は下りますが、京土会事務局に保存されている最も古いもの、大正6年土木会員名簿の表紙を示します。中身を見ると、当時の日本の土木・建築界の屋台骨を支えた錚々たるメンバーが名を連ねております。その後、戦後の混乱期を経て、会則を大改正し、新しい京都大学土木会として生まれ変わったのが、昭和37 年6 月18日であり、現在の京土会はこの時が出発点といってもいいでしょう。この日は土木工学教室創立65 周年の記念日でもありました。

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写真- 1 名簿表紙

わが国の経済成長が拡大傾向になった昭和37 年に改正された土木会規約では、増大する学生会員の会への積極的参加と学生中心の土木会の事業を明記しております。すなわち、21 名以内の学生委員を役員として選出し、この会は学生の会員を中心とした研究会、見学会、運動会などの事業を行う事としています。実際当時の京土会事業報告を見ても、新入生歓迎比叡登山、学生映画会、教官学生懇話会、運動会、予餞会と多彩な行事が行われております。その後、昭和44 年の激しい学生運動期を経て、昭和47 年に京土会規約の改正を行い、学生会員の会費を無料として、むしろ卒業生の同窓会としての性格を強めたのであります。こうして、京土会は時代の空気を読み取り、学制改革、土木系教室の発展などに対応して若干の修正を経ながらも、極めて柔軟かつ寛容な本会の主旨を受け継いできております。たとえば、平成8 年度には地球工学科の発足、大学院重点化に伴う研究科・専攻の改組、研究所・センターなどの改組など、大幅な機構改革に対処して会員条項の追加・改正がなされています。

改めて述べますと、京土会は、京都大学土木系の卒業生および学生を中心に構成され、「土木工学の発展に寄与し、会員相互の親睦をはかる」ことを目的としたものであります。平成18 年度現在、会員数は約8570 人(内学生1312 人)で、年々増加を続けております。会の運営、活動、会員の異動・動静などを広く知らせるために、京土会は、事業の柱として毎年の名簿と会報の発行を挙げており、毎年9月中旬に会報を、12 月初めには会員名簿を刊行して、正会員全員に配布し、卒業生の動静を知るのに大変役立っていると好評を得ております。名簿は年々厚くなり、平成18 年度は600 ページ余りになっております。土木・建築関係だけでなく、各界に多数の人材を供給しているため、名簿のクオリティを保つことは重要で、名簿の発行には、多大の努力を払っております。ただ、最近の個人情報保護法への対処を苦慮している状況です。

京土会では、毎年、京都大学の創立記念日(6 月18 日)前後の土曜日に、各地から多数の会員の出席を得て、役員会・総会、懇親会を開催しています。そこでは、事業及び会計の報告や計画・予算、大学の近況報告、各支部の活動報告などと共に、会員に関心のあるテーマについての特別講演も行われ、会員相互の情報交換と親睦の実があげられています。

京土会には北海道から九州に至る各地に現在17の支部(北海道、東北、東京、千葉、新潟、東海、北陸、京滋、奈良、大阪、神戸、岡山、広島、山口、四国、北九州、福岡)が置かれており、中でも東京、大阪支部に約半数の会員が所属し、大都会に集中している状況です。しかし、規模の大小にかかわらず各支部では、支部総会・例会・見学会・懇親会など、各地の特色を生かした活発な活動が行われております。さらに、学生会員サービスとして、交流・親睦のための園遊会や各種スポーツ大会、予餞会などを実施しています。

最近の話題として、平成9 年(1997)京都大学が創立100 周年を迎えると同時に、京土会も京大土木100 周年記念事業を実施いたしました。その詳細は、工学広報No.28 に「京大土木100 周年記念事業」として足立紀尚教授(現名誉教授)による紹介記事が掲載されているので、参考にしていただければと思います。したがって、ここでは、その時の事業内容の概略を示すに留めます。

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写真- 2 京大土木百年 人物史

  1. 記念式典、特別講演会(曽野綾子氏)、パネルディスカッション(テーマ「われわれの選択は何か?―21 世紀の土木」)、祝賀会の挙行
  2. 複数の記念シンポジウム…いくつかのテーマでシンポジウム開催
  3. 京大土木百周年記念誌…教室百年の歴史と将来展望のための記念誌刊行
  4. 研究委員会…産学官の共同研究委員会の発足
  5. 記念図書・資料室…貴重な図書・資料の補完と展示のための資料室の設置(吉田キャンパス土木赤レンガ建物内)
  6. 同窓会の充実…膨張する京土会会員のための同窓会機構の見直し
  7. 教育・研究環境整備への支援…学生や若手研究者への援助や支援

中でも、京大土木百年人物史についての記念シンポジウムは、土木教室百年の歴史を創った人々の業績を紹介し、いかに土木が人々の生活と密着しているかを議論すると共に、将来へ向けての土木技術者像が議論されました。その内容は冊子にまとめられておりますので、是非一読いただきたいものです。写真- 2 に冊子の表紙を示します。

地球系教室(土木系教室)にとっての大変動は、長年住み慣れた吉田キャンパスの工学部5 号館から桂への移転でした。地球系総合研究棟の完成に伴う平成18 年10 月1 日からの地球系桂キャンパス開学を記念して、京都大学地球工学系三専攻桂キャンパス移転祝賀会が、平成18 年11 月25 日(土)午前中に主催:地球系3 専攻 共催:京大土木会、京大水曜会、京大建築会で盛大に執り行われました(写真- 3 参照)。また、C クラスターの中庭で記念植樹が行われ、末永い繁栄を祈念いたしました(写真- 4 参照)。その日の午後には、新装なったクラスターC1 - 2 校舎の最上階の部屋GLOBAL HALL「人融」で、多数の来賓、卒業生などをお招きして、京都の西山山麓や市内を見下ろしながら、盛大な記念祝賀会が開催されました(写真- 5)。また、京土会は地球系総合研究棟の玄関ホールの整備にも協力し、いろいろなものが現在有効活用されております。

今日このごろは大改革の時代と言われており、京土会も輝かしい伝統を受け継ぎながら、産官学で進行している改革に柔軟に対応し、拡大する土木系分野の発展と会員相互の交流により一層寄与することが要請されています。京土会という組織を今後どのように運営していくか、組織の活性化に向けて様々な内容の改革案、改善策を検討しております。今年度からは、大学の「ホームカミング・デイ」施策の一環として1 ~ 2 ヶ月に一回程度卒業生に来ていただき、「ランチタイム講話会」として産学官連携、大学への要望、仕事の経験談などをざっくばらんに教員や学生に話していただくという企画を始めております。今後、会員の情報交換の場として一層重要な役割を担うよう、充実した組織運営が期待されるところであります。

(教授・都市環境工学専攻)

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写真- 3 式典

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写真- 4 記念植樹

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写真- 5 桂移転祝賀会