宇治キャンパス放射実験室

内藤 正裕

内藤正裕技術専門員私は昭和61年4月に技術職員として採用され、原子核工学教室に配属されました。業務は研究室の依頼に基づく実験装置・部品の製作でした。学生の頃から機械ものには興味があり、図面をみて分解・組み立てなどを楽しんでいましたが、採用当初は加工に関する知識などほとんどありませんでした。前任の方からは汎用加工機の使い方や依頼への対応などを丁寧にご指導頂きました。それでも退職者との入れ替わりで引き継ぎ期間が短い事もあり、すぐに技術を習得できる訳もなく、着任 後しばらくの依頼には苦心して対応していた覚えが あります。

原子核工学教室は昭和32年に創設され、6講座が設置されました。当初はキャンパス内に専攻の建物もない状況でありましたが、実験装置の充実を優先することとし、そのために教員方がずいぶん奔走されたとの事でした。予算化の際、原子核の実験装置は大型である事などから吉田キャンパス内での設置を断念し、当時敷地に余裕のあった宇治キャンパス内に設置する事になりました。昭和38年に中性子発生装置・未臨界実験装置を備えた専攻念願の実験施設「放射実験室」が開所し、これ以降も特別設備である原子動力実験装置(昭和40年)、核燃料実験装置(昭和43 年)、重イオン核物性実験装置(昭和43年)、および金属イオン物性試験装置(昭和53年)が次々と設置されました。設備の導入に伴って技官が配属され、装置の維持・管理、教員・学生の研究活動への支援、学生実験の担当などに活躍し ておられました。最近は定年による削減により人員が不足するようになったため、これら設備の維持運営に関しても私が対応する事になりました。

放射実験室
放射実験室

放射実験室は宇治キャンパス本館の西側に位置す る1階建(一部2階建)の建物で、教育や研究に活発に利用されています。一部施設は当初から共同利用設備として学内外の研究者に広く開放しており、各方面から多数の利用を頂いております。今までに組織の再編で改組があったり、研究科附属の量子理工学教育研究センターが設置されることなどもありましたが、原子核工学では同センターと共同で施設を運営しています。放射実験室での私の業務は粒子線加速器装置の維持・管理が主で、設置から40年にも及ぶ実験装置が今も高い稼働率で共同利用されている事もありますので、装置の定期的なメンテナ ンスは非常に重要で、年に一度のオーバーホールや運転状況の管理、学生・教員の相談を受けて現場での装置製作や改良に関する相談、ラインの組み替え等の作業等にも対応しております。

また当施設では、当初からの装置を維持し続けているだけではなく研究内容の発展や多様化に対応すべく、イオンビーム分析実験装置(昭和63年)、マ イクロイオンビーム解析実験装置(平成21年)と継続して設備の更新・充実を行っています。現在利用を頂ける装置は、4基の粒子線加速器であり、 イオンと原子分子の衝突反応過程に関する研究やPIXE、RBS、チャンネリング、ERDA等の元素分析・ 構造解析などを行っております。

建物は50年も経過して老朽化していたため、実験装置や周辺機器だけでなく施設の定期点検、また急な故障など思わぬ対応なども行っておりました。 しかし、建物は4期にわたる増設を経て現在の形になっているため、接合部分などから雨水が浸入する 事も多く、幾度と補修を行ってきましたが、効果はあまりありませんでした。その結果そこここで雨漏れがあるような悲惨な状態で実験を行っておりまし た。この度、施設部・工学研究科など事務部のご協力により、7月から5か月に及ぶ耐震改修工事を行って頂きました。工事計画などの確認に始まり、実験室内の物品の移転、工事期間に作業内容の確認・ 調整、施工後の点検、移転物品の再搬入、室内整理、装置の再立ち上げなど大変忙しい期間でしたが、工事によって不具合箇所が改善され、新しい施設に生まれ変ったようになりました。ご協力頂いた方々には大変感謝をいたしております。

放射実験室は研究環境も整い、装いも新たに活動 を再開致しました。今まで以上に教育・研究活動に ご利用頂く事を期待しております。

(技術専門員 技術部)