URAという仕事

長谷川 博一

長谷川先生画像私は本年3月で34 年余り奉職した京都大学工学部・工学研究科を定年退職しましたが、特定業務専門職員シニアURA として再雇用され、工学研究科附属学術研究支援センター・センター長を務めさせて頂いております。長年お世話になった高分子化学専攻では助手、助教授、教授を務めさせていただき、多くの方々に助けられ、研究生活を楽しませていただいたことを感謝しております。その間の研究環境の変化を顧みますと、今の教員の先生方は雑用が増えた上研究費が削減され、競争的資金の獲得に時間を割いて努力しなければ研究の遂行もままならない、研究者として多難な状況に置かれている現状を心苦しく思っております。今後は先生方のご負担が少しでも軽くなるよう、URA としてお手伝いをして行きたいと思います。

URA という言葉は聞き慣れない方も多いと思います。URA は英語のUniversity Research Administrator の頭文字をとったもので、事務職と研究職の間の中間職とも言われていますが、欧米では大学における研究を組織的にマネジメントする第三の職種として認知されており、米国では既に50年以上の歴史があります。日本では「研究開発内容について一定の理解を有しつつ、研究資金の調達・管理、知財の管理・活用等をマネジメントする人材」として「リサーチ・アドミニストレータ(URA)を育成・確保するシステムの整備」事業が文部科学省によって始められ、公募により平成23 年度に「研修・教育プログラムの作成」委託先として早稲田大学が選ばれ、「リサーチ・アドミニストレーションシステムの整備」実施機関として東京大学、東京農工大学、金沢大学、名古屋大学、京都大学が選定されました。平成24 年度にはさらに10 大学が追加されたほか、その他の大学でも独自にURA を設ける大学が増えています。京都大学ではこの事業により研究担当理事のもとに学術研究支援室が設けられ、シニアURA 3名と若手URA 6名が研究支援活動を展開しています。京都大学では平成24 年度からURA 独自の財源により1~数部局からなる地区単位でURA を配し、学内URA ネットワークを整備しましたが、工学研究科は桂地区で平成24 年12 月に工学研究科附属学術研究支援センターを発足させました。

一方、桂キャンパスの南方には桂イノベーションパークが広がっています。その中でキャンパスに一番近い道路沿いのガラス張りの建物「JST イノベーションプラザ京都」では、科学技術振興機構が京都大学をはじめとする京都府・奈良県下の研究機関の研究成果の社会還元を目的として、シーズの発掘から実用化までの研究開発支援事業を行っていました。しかし、民主党政権の事業仕分けにより平成23 年度末に閉館となり、その後、工学研究科学術協力課の働きかけにより、本年4月にこの建物が京都大学に無償譲渡されました。整備を行った後、5月には「京都大学工学研究科イノベーションプラザ」という名称で再開され、その1階に学術研究支援センター事務室が開設されました。現在センターでは私と企業出身の宮井均氏がURA として研究支援業務を行っております。建物の2階と3階は貸しラボになっていますが、1階には90 名収容のセミナー室が、2階には20 名収容の会議室がありますので、小規模の会議や講演会などにご利用いただけます。

学術研究支援センターでは工学研究科に関連のある各種競争的研究資金公募情報を収集し、ホームページを通じて発信しており、先生方がこれらに応募申請される場合はその支援をさせていただくほか、先生方の研究成果の公開や技術移転の支援を行っていこうと考えております。また、JST イノベーションプラザ京都が行っていた事業を継承し、京都市・京都府とも連携して地域産業との共同研究のコーディネートなど産学公連携事業の支援も行う予定です。イノベーションプラザの学術支援センターが工学研究科の学外への窓口となるよう努めて参りたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

(学術研究支援センター長)[元高分子化学専攻 教授]