環境試料分析に触れて

塩田 憲司

塩田様写真私は、2004 年4 月に技術職員(都市環境工学専攻)として採用され、衛生工学・環境工学系(以下、環境系)の教育研究支援担当となり、アドバイザーをご担任下さった武田信生教授(現、京都大学名誉教授)の研究室にも属することとなりました。地球系3専攻の桂キャンパス移転に伴い、2006年9月ごろから活動の中心は綜合研究棟V(C1棟)へと移りました。採用から13年が経過し、現在は工学研究科技術部や環境安全衛生等の業務も担っておりますが、環境系の学部生および大学院生への教育研究支援も一貫して行っております。

環境系では、地域環境から地球環境にいたる様々な環境問題を把握し、将来予測や解決、あるいは新たな問題発生の防止等を行うための教育研究を行っております。大気、水、土壌、廃棄物等々扱う対象試料が異なればその組成も様々で、それらの物理的・化学的・生物学的性質等を総合的に理解することが、諸問題を考える上で重要となります。それには、原因となる微量汚染物質はもちろんのこと、共存物質等試料についての様々な情報が必要不可欠です。共存物質や試料自身の性状が微量汚染物質の環境動態に影響を与えるだけでなく、その無害化処理の際、非意図的な副生成物が新たな問題の原因となることもあるからです。他分野同様環境系の実験においても、試料の基礎物性の把握は基本となります。

私の業務のひとつは、そのような基礎物性把握のための、元素やイオンの定性定量分析支援です。分析には、各研究室所有の分析機器以外に環境系研究室共用の分析機器群も利用しますが、分析機器群の使用方法およびデータ解析の指導やメンテナンス等も行っております。実際の環境試料自身や各種評価試験分析等を行う際に、適切な機器や試料の前処理を選択する上で、ここでも分析試料の様々な情報が重要になります。例えば、溶液試料に含まれる元素の定性定量分析において、機器によっては溶媒、pH、共存塩濃度等溶液の性状によって対象元素の検出感度が変化し、時には定量の妨げとなることがあるだけでなく、装置自身にとっても不適切な場合もあります。特に環境試料は測定対象元素の種類および濃度が広範囲に及ぶことが多く、そのような問題に直面し装置に負荷をかけてしまうこともしばしばですが、研究上必要な分析ですので、先生や学生さんのご希望に出来るだけ添えるよう対応しております。

また、共用分析機器等では分析が困難な場合には、学外施設の実験設備を利用する分析に同行させていただいたりします。そのような機会は大変貴重な経験となるだけでなく、大いに刺激となります。

漠然とした内容ですが、業務の一部を紹介させていただき、関係者の皆様に感謝申し上げます。私たち技術職員の活動が、工学部・工学研究科に限らず、京都大学における教育研究活動の伸展に少しでもお役に立てるよう、今後も研鑽に励んでいく所存です。

(技術専門職員)