「光・電子理工学教育研究センターへの改組について」

光・電子理工学教育研究センター長 石川 順三

石川 順三工学研究科附属光・電子理工学教育研究センターは、旧工学研究科附属イオン工学実験施設が改組され、センター長石川順三教授(電子工学専攻)、副センター長野田進教授(電子工学専攻)の体制で平成19年4月1日に発足しました。ここでは、その改組の経緯と新センターの概要を述べることにいたします。

昭和53年に設置された旧工学研究科附属イオン工学実験施設は、イオン工学の先端研究を遂行するというミッションを持った附属施設であり、これまでイオンビームプロセスに軸足を置いて、様々な材料・デバイス・プロセスに関する研究を行い、特別推進研究やNEDOプロジェクトなどの外部資金獲得も行ってきました。特に、従来のイオンビーム技術の限界を打破する材料プロセス技術としてのクラスターイオンビーム技術は、国内外において高く評価されてきました。

一方、電気系専攻が獲得した21世紀COE「電気電子基盤技術の研究教育拠点形成」では、フォトニック結晶による光ナノデバイスの研究やSiC 材料によるパワーエレクトロニクスの研究など、材料・デバイス・システムなどの複合研究領域で著しい研究成果を挙げてきてきました。

光・電子理工学教育研究センターへの改組について

図1 工学研究かにおける電気電子基盤技術の位置づけ

これらのイオン工学実験施設の研究成果および21世紀COE の研究成果をさらに持続・発展・展開させるために、一昨年度からイオン工学実験施設を発展的に改組し電気工学専攻・電子工学専攻との緊密な協力体制を図り、21世紀社会を支える電気電子フロンティア基盤科学技術の根幹となる光・電子材料、デバイス、システムの融合研究拠点の形成と、次世代先端技術を担う博士課程学生の人材育成を通して幅広い専門知識を持ち国際的に通用する研究者の育成を行うことを目的とする新しい教育研究センターを設立したいという機運が高まってきました。このセンター構想は、電気系専攻内で長期に亘って計画してきたもので、京都大学・工学研究科の中期計画(中期目標)にも記載されており、当初計画していた時期にそれを実現できることになりました。

電気電子基盤技術というのは、図1に示すように、今日工学の中で電気電子分野だけでなく、化学分野、機械分野に対しても重要な位置づけにあることはご承知のとおりと思います。すなわち、工学研究科全体の共有財産としての、電気電子フロンティア基盤技術ということができます。

光・電子理工学教育研究センターへの改組について

図2 センターの人材育成計画・プログラム

そこで、この新しいセンターでは、工学研究科における電気電子フロンティア基盤技術を育成、展開、共有するために、図2に示すように、複合研究ユニットを形成し、電気系専攻内の研究室間の枠、あるいは他の専攻間の枠を超えた融合分野で共同研究を行い、先進的・先端的研究分野の創出・展開を図ろうとするものです。すなわち、イオン工学実験施設だけではできない、21世紀社会を支える電気電子フロンティア基盤科学技術の根幹を支える光・電子材料、デバイス、システム、計測等の融合研究拠点の形成を行い、様々な外部資金の獲得や産学連携・国際連携の窓口(拠点)としていく計画です。当面はこのような新しい研究組織形態のインキュベーションとしての役割を果たしていきたいと考えています。

また、工学研究科では、平成20年度から大学院前期後期連携教育が始まりますが、このセンターでは、電気電子フロンティア基盤技術をベースに、複合研究ユニットを積極的に活用し、また複数研究分野の教員による集団指導を活用して、電気電子工学専攻の次世代を担う優れた若手研究者(博士課程学生)を育成するプログラムの支援をすることにしています。

光・電子理工学教育研究センターへの改組について

図3 センターの部門組織

センターの部門組織は、図3に示すように6部門から成ります。これら各部門は、先に説明した複合研究ユニットに相当します。まず、フロンティア基盤を支える部門として「ナノプロセス部門」を設けています。教員構成は、旧イオン工学実験施設クラスターイオン工学部門の専任教員と兼任教員からなります。この部門の中で、旧イオン工学実験施設のミッションは引き継がれます。「光・電子材料部門」、「デバイス創生部門」、「集積システム部門」および「量子生体計測部門」は、兼任教員だけからなります。これらの兼任教員ポストを通じて、電気工学専攻、電子工学専攻の関連分野、および工学研究科の他専攻との流動的な融合的共同研究の体制を形成します。また、この融合的共同研究体制を、次年度から始まる博士前期後期課程連携教育プログラムに積極的に利用します。さらに、海外との共同研究や国際協力の窓口として「国際コラボレーション部門」を置いています。この部門の教員構成は旧イオン工学実験施設の外国人客員教員ポストです。また、産学リエイゾンについては国際イノベーション機構との連携を図ります。

これら部門の構成員は旧イオン工学実験施設の教員以外は、当面は電気系専攻の各分野からの兼任教員で構成しますが、これはあくまで将来のセンターの体制のインキュベーションの姿であって、今後十分な外部資金を受け入れることができれば、多数の有期雇用教員を補充して、部門の研究者の充実を図っていくことにしています。

幸い、平成19年度のグローバルCOE(「光・電子理工学の教育研究拠点形成」代表者:野田進)が採択されましたので、センターはグローバルCOE と協調しながらその活動を進めていくことになります。

最後に、この新センターがますます発展できるよう、工学研究科の皆様からのご支援を引き続き戴きたいと考えております。

(教授・電子工学専攻)