景観性に配慮した盛土構造の実現を目指して

岸田 潔

岸田 潔土を盛った構造体(盛土)で道路を作るほうが、高架橋にするより一般には安価で災害時の復旧も比較的容易です。国土交通省など道路事業者は、できるだけ盛土で道路を作りたい、と考えています。しかしながら、地域住民からすれば、「分断される」、「風通しが悪い」、ということで盛土は敬遠される傾向にあります。結果として、高架橋が選択されることになるのですが、盛土に比べてその建設費は大幅に高くなるのが常です。

そこで、国土交通省近畿地方整備局、複数の民間企業および京都大学でプロジェクトチームを結成し、図に示す見た感じは“ 橋”のような盛土構造物の実用化の検討を行っています。これは、盛土の中に連続するコンクリートアーチ構造を挿入するもので、一見するとアーチの石橋のようです。地域の人には、「分断しない」「風通しを妨げない」という点で受け入れやすく、さらにアーチ橋の美しさからちょっとしたランドマークになるのではと期待しています。大学の役割は、この新しい構造物の実用化に向けた技術的課題の解明です。技術的課題は、構造のアンバランスがもたらす基礎地盤の不同沈下、最適な地盤改良範囲の決定と沈下抑制効果の評価、供用後の性能劣化と維持管理、等です。プロジェクトチームで設計規範を作成することを検討しています。

連続するアーチ構造を挿入したこのハイブリットタイプの盛土構造は、実際にある地点で完成し、複数の地点で導入が検討されています。個々の地点でそれぞれ問題を抱えており、それぞれに対応するにはまだまだと言ったところです。「私ののんびりしたペースでは、なかなか実際の問題への対応が……」というのが正直な印象ですが、「まあ地道に」と思って取り組んでいます。

景観性に配慮した盛土構造の実現を目指して
連続するアーチ構造を挿入したこのハイブリットタイプの盛土構造のイメージ図

景観性に配慮した盛土構造の実現を目指して

専門は、岩盤工学・地盤工学で、もともと地盤工学の研究室に所属していましたが、現在、河川工学の研究室に所属しています。地盤と地下流体の挙動は、相互に関連するもので、その解明には様々な課題があります。地盤だけでなく、流体を含めた連成挙動の解明が、ひとつの重要な課題となっています。最近では、温度や圧力による岩石の構造の変化(融解や沈殿過程)を含めた岩石の流体挙動解明に取り組んでいます。これらの成果が、放射性廃棄物の地層処分技術に活かされるよう、研究に取り組んでいます。

いまだに社会人のクラブチームでバスケットボールをやっています。最近は、クラブリーグで大学生ぐらい年齢のチームと対戦すると、かなり惨めな負け方をします。テクニックは、勝っていると思っているのですが……。今年、ユニフォームを新調したのですが、家内からは「まだやるの。」という冷たい視線を感じました。息子の応援が、心の支えです。

(准教授・都市社会工学専攻)