固体表面上での分子の光活性化機構の解明を目指して

寺村 謙太郎

寺村 謙太郎京都大学の次世代開拓研究ユニットの寺村謙太郎と申します。次世代開拓研究ユニットは文部科学省の科学技術振興調整費による「若手研究者の自立的研究環境整備促進」プログラムに採択され、若手研究者の育成と活力ある研究環境の形成を目指すところとして、平成18 年7月31日に設置されました。その後国際公募が行われ、12名の助教が採用されました。私自身は「化学における光理工学的アプローチ」の分野で助手として採用され、平成18年の12月1日付で着任いたしました。研究を推進するに当たって、工学研究科の各専攻、特に私の研究テーマが物理化学分野ということもあり、分子工学専攻ならびに物質エネルギー化学専攻には研究上ご協力いただいております。

このプロジェクトでの私の研究テーマは「環境負荷軽減及び循環型化学プロセス構築のための次世代光触媒反応の開拓」です。現在、人類社会は石炭、石油、天然ガス等の化石資源の大量消費によって支えられていると言っても過言ではありません。これらの化石資源は近い将来枯渇するといわれているため循環型の代替エネルギーの創生が急務とされています。また、化石資源の大量消費によって発生する二酸化炭素は地球温暖化の要因といわれています。一方で燃焼により付随的に発生する環境汚染物質は光化学スモッグや酸性雨などの公害を引き起こします。これらの環境問題に加えて、化石資源は産出される地域が偏在しているため、様々な社会問題や国際問題を生み出していることは皆さんがご存じの通りです。今後、化石資源だけに頼らない社会を作るには省エネルギーや環境対策を進めるだけではなく、新エネルギーの創生・環境にやさしい循環型の化学反応プロセスの開発が重要となります。

固体表面上での分子の光活性化機構の解明を目指してそこで、私が注目しているのは地球上に無尽蔵に降り注ぐ太陽光から得られるエネルギーです。この太陽光エネルギーを利用して新エネルギーの創生・環境にやさしい循環型の化学反応プロセスの構築への道筋を作りたいと考えています。今のところ太陽光エネルギーをそのまま利用することは非常に難しいため、太陽電池や光触媒などのエネルギー変換材料を用いて太陽光エネルギーを有効かつ安価に変換することが求められています。そのための効率の高い太陽光エネルギー変換材料の開発は非常に重要なテーマの一つです。また、私は光触媒を用いることによって今まで実現困難とされてきた夢の反応を実現化しようと試みています。具体的には炭素循環型社会実現のための二酸化炭素の光還元反応及び高難度選択酸化等に代表される新規環境調和型有機合成反応です。変換が困難とされている分子の多くは固体表面上に吸着することによって様々なコンフォメーションをとることが知られています。無機固体物質である光触媒の表面物性を明らかにし、得られた結果をフィードバックすることで、次世代の光触媒反応を実現可能な光触媒材料の合成に生かしていきたいと思います。私のライフワークは固体表面上の吸着種の光活性化機構の解明であり、今後は「太陽光」・「光触媒」・「化学変換」の三つのキーワードでこのテーマに取り組んでいく予定です。

京都大学次世代開拓研究ユニットでは独立して研究を進められる環境が整っており、基礎科学から応用化学にまたがる幅広いテーマを積極的に展開していこうと考えています。

(助教・次世代開拓研究ユニット)