京都から仙台へ

山末 耕平

yamasue.jpg私は、電気電子工学科を2002年に卒業し、2004年、 2007年に電気工学専攻の修士課程・博士後期課程をそれぞれ修了しました。その後、ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)の博士研究員を経て、2009年に電子工学専攻の助教に採用されたのち、2010年からは約三十年過ごした京都を離れ、仙台の地で東北大学電気通信研究所の助教を務めております。

学部生の研究室配属では、電気工学専攻の引原隆士先生の研究室を志望しました。きっかけは、偶然、書店で手にとった書籍の監修者に上田睆亮先生(現名誉教授)のお名前を見つけたことです。当初は、電子物性工学専攻(現・電子工学専攻)の研究室に興味を持っていましたが、調べるうちにカオス現象の工学的応用に関する研究に興味を奪われたことが一つの要因となって、一転、旧上田研究室の系譜にあった当時の電力システム研究室の門を叩きました。定員を超えて志望があったものの(伝統の?)「じゃんけん大会」を運良く勝ち抜いた当時の一コマが思い出されます。その後、博士後期課程に至るまで一貫して引原先生の御指導の下、ある種の電磁機械系に生じるカオス振動の制御とその原子間力顕微鏡(AFM)への応用に関する研究で学位を取得しました。続く3年間で、VBL施設長の松重和美先生(現名誉教授)の研究室にて、実際のAFMを使用させて頂き、それまでシミュレーションのみにとどまっていた結果を実機で実証する幸運に恵まれました。研究の進展にともない活動の場が、当初の非線形理論とその応用の分野から、現在の走査型プローブ顕微鏡(SPM)や表面・界面物性の分野へとシフトしたのもこの頃です。成果を出せず苦しんだ時期でもありましたが、一方で、シミュレーションから苦手意識のあった実験への取組みや、異分野の研究者との交流を進める中で、学生時代に比較して、研究者としての幅を拡げられた重要な時期でした。

現在は、東北大学電気通信研究所誘電ナノデバイス研究室において、SPMを用いた電子材料・デバイスのナノスケール評価技術の開発に取り組んでいます。異動前後で、SPMという共通項はありますが、研究内容やその趣は全く異なります。近年、電子デバイスの微細化がナノスケールまで進むと同時に、種々の新規材料による既存のSi材料・デバイスの置き換えが模索される中、従来手法では、材料やデバイスの評価を必ずしも十分に行えていない現状があります。私の研究では、特に走査型非線形誘電率顕微鏡(SNDM)と呼ばれるSPMを用いた、表面・界面電気双極子や界面電荷状態の原子スケール評価技術の実用化を目指し、極超高真空で原子分解能を達成可能なSNDMの開発を進めています。異動直後は、未経験の超高真空機器や、やたら壊れる(壊す?)実験装置の扱いに苦労しましたが、五年も過ぎれば、いくらかは心得るものです。今では、学生が装置を壊しても「実験せんかったら装置が壊れることもないからね」との師の言を引用して、一緒に原因を探り、修理することにしています。

(東北大学 電気通信研究所 助教)