海外研修(International PhD School)に参加して

中嶋 麻起子

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博士後期課程1回生であった平成23年8月に馬詰研究奨励賞を受賞し、その副賞として平成25年4月にブラジルのPontifical Catholic University of Paranaで行われたInternational Association of Building Physics主催のInternational PhD Schoolに参加する機会を頂きました。

このSchoolでは、ヨーロッパ、南アメリカを中心に各国の修士課程、博士課程の学生たちとともに、朝9時から夕方6時まで各分野の専門家たちから講義を受け、ケーススタディやシミュレーションを行い、その結果に基づいて討論し、翌日までにプレゼンテーションやレポートを作成するという、勉強に浸りきった生活を過ごす貴重な機会を持つことができました。約1週間寝食を共にして、互いの研究テーマについての意見交換を行っただけではなく、学生生活について、今後の展望について語り合うことができたのはよい経験となりました。また、そこで知り合った学生たちと、本年6月に参加したイタリア・トリノでの6th International Building Conferenceの場で再会し、それぞれの分野で活躍していることを知って非常にうれしかったです。それまで海外旅行すら経験したことがなかったため、たった一人で地球の反対側まで行き、慣れない英語ですべてのコミュニケーションを行わなければならないことに不安はありましたが、とにかく覚悟を決めて飛び込んでみればなんとかなるということを知りました。

私は学部4回生のころから一貫して、気生藻類の生育を主原因とする外壁汚れについて、どのような部位に藻類が生育し、それに対して周辺環境条件がどのように関与しているかを明らかにし、外壁での気生藻類の増殖・死滅モデルを作成することを目的とした研究を行っています。このような外壁汚れや、生物による汚染・劣化については、ヨーロッパでも興味を持たれていますが、未だ明らかになっていない点も多く、PhD Schoolでもその一例が紹介されていました。他にも、建物のエネルギー性能のリスク管理、建物のシステム性能の評価、建物や材料内での熱・湿気の移動現象など高度な建築環境工学に関する講義が行われ、最先端の研究者から直接お話を伺えたことは有意義な経験でした。講義の基礎的内容はこれまで日本で学んできたことであり、それらが理解できたことは自信につながり、世界の様々なところで、同じ分野を学び研究を行っている先生方、学生たちがいることを身近に感じたことは、その後の研究生活の励みになりました。それとともに、英語によるコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力が、自分にはまだまだ不足していることに改めて気づかされました。

今回の海外研修に参加したことで、今後の研究生活において活躍の場を世界に広げてきたいというはっきりとした目標を得ることができました。現在も博士後期課程に在学中ですが、本年9月に学位取得見込みであり、10月からは他大学で助教の任に当たる予定でおります。本奨励賞により、このような機会を頂けたことに深く感謝しています。

((平成23 年度受賞者)博士後期課程 建築学専攻)

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PUCPR Japanese Garden にて参加者たちと共に