University of Southern California での海外研修

杉野 未奈

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私は、京都大学で建築学科を卒業、建築学専攻を修了し、2015 年3 月に博士の学位を取得しました。2015 年4 月からは建築学専攻の助教として研究を続けております。現在は、京都に多数残る京町家をはじめとした伝統木造建物の地震時挙動の解明と耐震診断・補強法の構築に関する研究を行うとともに、大振幅地震動に対する超高層建物などの建築物の倒壊余裕度に関する研究を行っております。

本稿では、博士後期課程在学中に受賞した工学研究科馬詰研究奨励賞の副賞により渡航した海外研修について報告します。馬詰研究奨励賞は、本学工学研究科を修了後、本学化学研究所において助手、講師として務められ、その後民間企業でご活躍されました故馬詰彰様のご遺族から工学研究科に寄附いただいたご遺産によって設けられた奨学表彰制度であり、海外研修等に要する渡航旅費、滞在費等が奨学金として給付されました。

私は2015 年2 月9 日から18 日間、University of Southern California(USC)に滞在しました。USCは1880 年に設立された私立大学で、カリフォルニア州ロサンゼルスのダウンタウンの南に位置します。学生が安全に登下校できるよう、大学が送迎バス・タクシーを提供しているように、USC 周辺は治安があまり良い地域とされていません。しかし、一歩構内に足を踏み入れると、設立初期の校舎が残る自然豊かな落ち着いたキャンパスで、快適な研究生活を送ることができました。

滞在中はMaria I. Todorovska教授の指導のもとで、地震観測記録を用いた超高層建物のシステム同定や、損傷度を被災後に判定するヘルスモニタリングに関する研究を行いました。Maria I. Todorovska 教授の研究グループは、地震波干渉法を応用した超高層建物のシステム同定やヘルスモニタリングに関する研究を精力的に行っており、ロサンゼルスに林立する超高層建物の地震観測記録を用いた分析も含め、多数の論文を執筆しています。研修中は、Maria I. Todorovska教授らが提案するせん断および曲げ変形を考慮可能であるティモシェンコ梁モデルを用いたシステム同定手法を学ぶとともに、同手法を用いて2011 年東北地方太平洋沖地震時に得られた日本の超高層建物の地震観測記録の分析を行いました。

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USC(手前)と超高層建物群(奥)

更に、滞在中にはDepartment of Civil and Environmental Engineering の博士課程の学生が出席するセミナーにて、私が現在取り組んでいる研究について発表を行う機会を設けていただくとともに、USC に在籍する著名な先生方と情報交換を行う機会を与えていただきました。本研修は1 カ月に満たない滞在期間ではありましたが、先生方からは真摯なご指導やご意見を伺うことができ、熱心に研究に取り組む学生と同じ研究室で席を並べて研究することができました。これらの経験は、学部学生から同じ研究室で研究を続けてきた私にとって新鮮であり、多大な刺激を受けました。また、学生と一緒に休日を過ごし、気さくに日常会話する機会を得て、将来への希望や悩みを共有することができたことが印象に残っています。今後は、お世話になった先生方や学生との繋がりを大切にして、本研修で受けた様々な刺激を忘れずに研究に励みたいと思います。そして、日本のみならず世界に目を向け、研究成果を国際社会に向けて発信できるように研究を続けていきたいと思います。

最後に、故馬詰彰様のご遺族をはじめ、この度の貴重な機会を与えてくださった皆様にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

((平成25 年度受賞者)助教 建築学専攻)