京都大学在学・在職中の思い出

入山 恭寿

入山私は1998年3月に京都大学工学研究科物質エネルギー化学専攻修士課程、2001 年3月に同博士課程を修了しました。2001年4月から物質エネルギー化学専攻小久見善八教授のもとで助手、2008 年4月から静岡大学工学部物質工学科で准教授を歴任し、2012年1月に名古屋大学工学研究科教授に着任致しました。現在は、無機固体電解質を用いた次世代二次電池に関する研究を中心に行っております。

エネルギー変換材料の基礎研究をされていた小久見研究室へ4回生の時に配属させていただき、最初に頂いたテーマが“パルスレーザーアブレーション法を用いたリチウム二次電池の電極活物質の薄膜作製”でした。電極/ 電解質界面で起こる反応はリチウム二次電池の性能に深く関わり、その基礎現象を調べるために薄膜電極は有用です。この時にご教授頂いた薄膜作製及び界面評価に関する基礎的知見は、現在でも私の研究を支える一つの柱です。修士課程途中からは、この薄膜技術を活かして“透過型電子顕微鏡(TEM)内部で電池反応を行い、それに起因する電極活物質の相変化を”in-situ“観察 する”というテーマを頂きました。百万遍の交差点近くの某カレー屋で、机の上におかれたナフキンを電池材料に例えて、小久見教授が熱心に実験構想を説明されるのを聞き、“それはおもしろそうですね” と即決をしました。(その後3年間は後悔をしました…)  自分の力が至らず、結局ex-situ測定の結果をまとめることで博士の学位を頂きました。その後、小久見研究室で助手を勤めさせて頂く際に、博士課程のテーマを完結させるために開始したのが無機固体電解質を用いた二次電池の研究でした。一方、当時は小久見教授がJST-CREST で“エネルギーの効率的変換を目指した界面イオン移動の解明”という題 目の研究プロジェクトを推進されており、有機電解質/ 電極活物質(及び固体電解質)界面でのイオン移動については安部武志助教(現 物質エネルギー化学専攻・教授)が精力的に研究を進められていました。このお手本に習い、私は固体電解質/ 電極界面のイオン移動を調べてみたいと思いました。界面イオン移動現象の奥深さに魅せられ、やり残した テーマをしばし忘れていましたが、2007年に(財)ファインセラミックスセンター様からin-situ測定のご相談を頂き、2008年から測定に適した電池の開発を中心に研究を再開しました。この研究は、現在、 NEDO-RISING研究の一部で進められております。

小久見研究室には、先輩諸兄が考案されたオリジナル装置・器具があふれており、ガンダム、UFOセル等の愛称をもつものもありました。そうした創意工夫の結晶を学生時代に見て触ることができたのは、私の大きな財産です。京都大学在学・在職中を思い返しますと、すばらしい環境のもと、研究室に配属された時から貴重な研究テーマを頂いたことに 改めて感謝をする次第です。現在、自分の研究室を立ち上げておりますが、学生には創意工夫を推奨し、失敗を恐れず、勇猛果敢に挑戦をしてもらえる研究室にしたいと思っております。

(名古屋大学大学院工学研究科 マテリアル理工学専攻 教授)
[工業化学科平成7年度卒業生]