公共交通の運賃制度の“公平性”を定量化する試み

田中 將巳

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 均一制、ゾーン制、距離制など、公共交通の様々な運賃制度が世界中の都市で採用されている今日、特に欧米圏の諸都市にて、運賃制度の改革が計画・実施されています(EMTA 調べ)。ただ、運賃制度が大きく変わることで、都市内のある地域が地価上昇や経済成長などの恩恵を享受する一方、ある地域は住民流出や魅力度低下などの損失を被る虞があります。それゆえ新たに運賃制度を検討する際には、収益性のみならず、結果として生じうる地域間の格差も考慮する必要があると言えます。そこで私の卒業研究では、距離制運賃制度とゾーン制運賃制度の地域間格差を定量化しました。仮想的な公共交通ネットワークを対象に、距離制またはゾーン制の下での OD 最小一般化費用と OD 需要から都市内の各地域の効用を求め、それらに公平性の指標として知られるジニ係数を適用しました。衛生都市型の需要ケースでは、ゾーン制が水平的公平性を向上させうるという結果が得られました。日本語での既往研究が少ない、慣れないプログラムを動かす、公平性の意味付けが難しいなど、一年間沢山の苦労があり、結局多くの課題も残る研究となってしまいましたが、屈せずに今後も研究活動に邁進していきます。

(都市社会工学専攻)