界面準位密度のエネルギー分布を考慮した SiC MOSFET の電気的特性のモデリング

伊藤 滉二

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 現在、人類はエネルギー・環境問題という喫緊の課題に直面しています。私は電力用半導体デバイスの新たな材料としてシリコンカーバイド(SiC)を用いることで、省エネルギーな社会の実現を目指しています。SiCはワイドギャップ半導体で絶縁破壊電界強度が高いため、理論上SiCを用いれば同耐圧の従来型シリコンデバイスと比較して導通損失を約1/300に抑えることができます。しかし、電力用半導体デバイスの本命である SiC MOS(Metal-Oxide-Semiconductor)電界効果トランジスタ(FET)では、酸化膜/半導体界面の高密度界面準位が伝導電子を捕獲するために、電気的特性のモデリングが困難であることが大きな課題となっています。これは、先行研究において界面準位密度と電気的特性とを結びつける定量的な議論が不十分であったためです。私は本卒業研究において界面準位による伝導電子の捕獲効果を考慮して、伝導電子の状態密度と界面準位密度のそれぞれに Fermi-Dirac 統計を適用することにより、SiC MOSFETの電気的特性のモデリングをすることに成功しました。同時に、正確な界面準位密度のエネルギー分布を得る手法も確立できました。この度、このような賞を頂き大変光栄に思います。今後も、この受賞を励みにしてより一層社会に貢献できるように研究に精進して参りたいと思います。

(電子工学専攻)