No.71 (2019.4) / 紹介 / 情報通信ネットワークとともに育って

情報通信ネットワークとともに育って

情報学研究科 助教 西尾 理志

西尾 理志web.jpg 私は現在京都大学大学院情報学研究科通信情報システムの守倉研究室にて助教を勤め、主に無線通信ネットワークに関わる研究に従事しています。1988年におぎゃあと地球に生まれ落ち、18年の歳月を雪国で過ごしました。そして2006年から13年間、京都大学にお世話になっています。そんな私の半生を振り返りつつ、自己や研究を紹介していきたいと思います。
私の研究興味の対象は情報システムです。インターネットやクラウド、センサネットワークを含む、情報を取得・伝達・処理する基盤であり、私にとってはもはや身体の一部のような感覚です。そのような感覚がいつ頃からかと考えると、インターネットと出会った中学生時代からのような気がします。当時は定額制インターネットサービスの普及により請求料金を気にしなくてよくなったことから、インターネットにどっぷりはまっていました。検索により欲しい情報がすぐ簡単に手に入り、遠隔にいる人と同期的および非同期的にコミュニケーションがとれるという新しい体験に、自己及び世界が広くなったように感じました。大学進学の際は情報に関わる研究がしたいと工学部の情報学科を受験したのですが落ちてしまい、後期試験で電気電子工学科に合格しました。(情報学科の後期試験は数学の難問で当時の私には歯が立たず…。)私の年を最後に後期試験が廃止になったのでラッキーだったなと思います。4回生からは高橋達郎教授の研究室に配属され、その後、修士と博士の学位も同研究室にて取得しました。
 研究を行うようになってからは、この情報システムという自身にとっての仮想身体機能が如何に拡張されると便利か、あるいは保持する機能をどう有効活用するかを念頭において思考しています。学生時代には、通信リソースや端末の持つ計算能力、センサから取得した情報も含めてネットワーク上に存在するリソースを端末間で相互活用する仕組みについて研究していました。計算能力の高いユーザは計算タスクを処理し、高速な回線を持つユーザはデータのダウンロードやアップロードを協調的に行う、というように近隣ユーザが協力することでサービスアプリケーションをより快適に使用できるようにするというものです。リソースの種類や量が異なるので公平性の判断基準が必要になるのですが、私は時間、具体的には削減できた時間長を評価指標として公平に協力し合うメカニズムを設計しました。守倉研究室の助教に着任してからは、情報システムのもつセンシングという機能をアプリケーションだけでなく、情報システムの別の機能である通信に活用する方法を研究してきました。特に光学カメラから得られる情報に着目し、ミリ波通信のような超高周波帯を用いた無線通信における遮蔽問題の解決に取り組みました。ミリ波通信では歩行者や動物、車両などが見通し通信路を遮蔽すると20 dB以上の減衰が生じるという問題があります。これまではアンテナダイバーシチやビームフォーミングを用いて、遮蔽が発生してから回復させる研究が多かったのですが、私の研究では光学カメラから得られる視覚情報をもとに、いつ遮蔽が発生するかを予測し、遮蔽が発生する通信路の使用を避けることでシステムスループットを低下させないという解決方法を検討しました。問題は、光学カメラ情報から遮蔽の有無や減衰量を正確に予想することです。新しい問題設定であり難しいかと思ったのですが、発展目覚ましい深層学習技術の応用により、歩行者が単調に動く通路のようなモデルであれば、0.5秒先の受信電力でも高精度に予測できることがわかってきました。今後も発展目覚ましい情報学の分野において研鑽に励む所存ですのでどうぞご指導ご鞭撻の程宜しくお願い致します。

(情報学研究科)