正井 宏

略歴

2011年3月 京都大学工学部工業化学科 卒業
2013年3月 京都大学大学院工学研究科修士課程物質エネルギー化学専攻 修了
2016年3月 京都大学大学院工学研究科博士後期課程物質エネルギー化学専攻 修了
2016年4月 東京大学大学院新領域創成科学研究科 日本学術振興会特別研究員PD
2017年6月 東京大学大学院総合文化研究科 特任研究員
2019年4月 東京大学大学院総合文化研究科 助教

メッセージ

正井 宏私は2016年に博士号取得後、東京大学に移って博士研究員を経て、現在助教を務めています。自分の修士1年の冬を思い返してみると、修士で就職するか、博士に進学するかというのは、自分の将来を決める大きな分かれ目だったと思います。しかし就職に比べると、博士進学というのは関連する情報や、特に将来のキャリアがあいまいです。そこで今回この場をお借りして、自分の経験などを踏まえながら、進学のメリットをお伝えしたいと思います。もしこれを読んでいる方が、研究というものをポジティブに考えているのであれば、ぜひ参考にして頂けますと幸いです。

博士で研究を続けたい、あるいは続けてみてもいい、そんな気持ちがあっても博士進学に抵抗がある理由として、「お金」と「時間」を挙げる方は多いのではないでしょうか?進学すると生活費が必要で、一方で就職すると給料が入ります。加えて会社のスキルが身に付くため、進学すると時間的に置いていかれるような気さえします。

しかしそんなことはありません。お金に関していえば、博士進学者への金銭的サポートは年々良くなっています。有名なのは学振と呼ばれる制度ですが、実はそれ以外にも博士学生をサポートする制度は色々とあります。その年に新制度が始まる場合もあります。まずは先生や先輩に相談してみて下さい。

そして時間に関しては、他人にはない自分だけのスキルを身につける上で、博士課程という環境は最適です。進学すれば研究分野を変えたり、異分野を学習したり、研究背景が違う人と交流することが自由にできます。これは就職にはない大きなメリットです。私も色々な分野や技術を習得し、それを元に研究員時代は合成から物理へと大きく舵を切りました。1つの分野を極めた人は数多くいますが、2つ、3つを極めた人というのは少ないため、非常に重宝されます。私は結果的に大学に残りましたが、博士で就職した方々も、密度の濃い3年間で自分にしかないスキルを磨いたことと思います。

最後になりますが、私も含めて、何も研究を知らなかった3年生の春休みから、たった2年程度で一通り研究できるまでになりました。進学することであと数年、京都大学という自由な研究環境で他人にはない複数の技術や知識を極めれば、それは何にも代えがたい将来の武器になると思います。ぜひ博士進学を検討してみて下さい。

 2019年5月掲載)