松田 朝彦

略歴

2008年3月 京都大学工学部物理工学科 卒業
2010年3月 京都大学大学院工学研究科 修士課程航空宇宙工学専攻 修了
2013年5月 京都大学大学院工学研究科 博士後期課程航空宇宙工学専攻 修了
2013年5月 アメリカ 国立標準技術研究所 客員研究員
2015年5月 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 ポスドク研究員
2018年10月 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 エンジニア採用

メッセージ

松田 朝彦


科学技術はめまぐるしく変化し続けるものであり、その中で研究者・技術者は、自分がやりたいこと(興味)・できること(専門)・社会から求められること(需要)の3つの交わりを最大化させていくことが重要だとよく言われます。

私は、プラズマによる材料加工に関する研究で博士号をいただいたあと、ポスドクとして米国と日本で数年間、半導体材料について研究しました。その後、マテリアルズ・インフォマティクスという新しい分野(材料科学と情報科学を融合させるデータ駆動型研究)を専門とする部署に加わり、現在は材料データを効率よく取り扱うためのシステム開発を行っています。この分野は欧米各国が先行しているのですが、海外の研究者と議論するにあたっては博士課程在学中に学会等で議論した経験や、米国でポスドクとして働いた経験が活きています。また、研究者とシステムエンジニアの異業種連合的なチームの一員として各自の視点を持ち寄って仕事する必要があるのですが、自分が行っていた実験等を通じて身につけた研究者としての考え方やデータの取り扱い感覚が役立っています。

ただ、かつては自分の研究経験やスキルがこういう形で活きるものだということには気づいておらず、ポスドクの頃は自分のキャリアパスに不安を覚えていたことは事実です。しかし周囲の人々との対話やご縁を通じて、自分のできること・やりたいことを再定義することができました。これが可能だったのは、博士課程とポスドク経験を通じて自分の中の専門性がひとつ育っていたためだろうと思います。興味・専門・需要の交わりを最大化させていくことは一生続く営みですが、興味を持った研究室の濃い環境で自分のひとつめの専門性を構築することは貴重な財産となるでしょう。世界と自分の未来はなかなか見通せないものであるからこそ、様々な可能性に対応できるような自分の強い軸を探していかれるとよいと思います。

 2020年5月掲載)