加登 遼

略歴

2014年3月 京都大学工学部建築学科 卒業
2016年3月 京都大学大学院工学研究科修士課程建築学専攻 修了
2019年3月 京都大学大学院工学研究科博士後期課程建築学専攻 研究指導認定退学
2019年4月 武庫川女子大学 生活美学研究所 嘱託助手
2020年1月 博士(工学)取得
2020年4月 大阪市立大学大学院 生活科学研究科 居住環境学講座 助教(現在まで)
2020年4月 立命館大学 地域情報研究所 客員研究員(現在まで)

メッセージ

■現在の職務内容

加登 遼私の専門は、都市計画です。その中でも、人口減少する居住環境のデザイン研究をしています。きっかけは、デザイン学大学院連携プログラム(デザイン学)の本科生だったことにあります。デザイン学は、1つのプロジェクトに多様な分野の専門家が関わる必要が出てきた社会的背景の中で、社会システムのデザイン学を確立すること、さらに、それをファシリテートできる人材を育てることを、ミッションの1つとして設立させた組織と聞いています。その中、デザイン学のシンポジウムで、副指導教員でもあった椹木先生が、「生活世界」の話をされて、目が覚める思いをしました。ハーバーマスの指摘するように、国家や経済などの社会システムのデザインに対して、コミュニケーションを基礎とした生活世界のデザインは、建築学専攻で都市計画を研究していた私には相性が良く思えて、腑に落ちたのを覚えています。そこで、研究指導認定退学した後は、遠藤新が設計した甲子園会館にある生活美学研究所で勤務した後、研究拠点を大阪南部まで広げて、生活科学研究科(大阪市大)で研究しています。学際的な組織の中で、多くの分野の人と連携しながらデザイン研究することは、現在も変わらず続けていることです。

■博士学位を取得しようと考えた動機
博士学位を取得しようと考えた動機は、デザイン学の本科生だったことが関係します。例えば、デザイン学の「スマートコミュニティプロジェクト研究会」や「アーバンデザインセミナー」を通して共同で研究し始めた茨木市役所の人々とは、博士課程で実際の都市計画制度の立案の一部調査に関わる機会を得て、博士論文の骨子となる研究を共同で行いました。また、現在も「共創ラボ@山手台」などを通して、共に研究しています。その他にも、デザイン学のFBL/PBL授業で関わった京都市修徳学区に移住して、まちづくり委員会や消防団などを担いながら、現在も共に研究しています。振り返れば、デザイン学での多様なプログラムを通して、数多くの人たちと出会い、その人たちに支えられて、自分自身もその人たちに支える側になればと思い、博士学位を取得しようと思いました。

■博士学位の取得の意義について
博士学位の取得は、その後の人生において、その専門分野で、プロの研究者として生きていくことだと理解しています。学位取得後の所属先は、大学に限らず、企業、研究所、シンクタンクなどの組織で働くことになりますが、共通して言えるのは、その分野で独立した個人のプロとして、自身に求められる社会的責務を背負い、数多くの失敗の中から、結果を出し続ける必要があるということだと思います。研究という面に限っては、年齢やキャリアなどは関係なく、皆同じ土俵で結果を出す必要があります。それを考えると、博士学位を取得する前に、いかに実力を高めるかが大事です。在学中に、色々な場で切磋琢磨して、十分な実力を蓄えた後に、博士学位を取得されることを期待します。

■後輩へのメッセージ
デザイン(設計)と研究の関係性について、私は、頭の回転が逆向きで、両者のバランスが大事だと思っています。デザインは、多様な与条件を整理しながら、全体性を解いていきます。その一方、研究は、全体の中のツボとなる部分に焦点を絞り、より深く解いていきます。例えば、都市計画で研究する私の場合は、特定のフィールドに入り、そこに住む人々との対話を基に、地域課題やビジョンなどに焦点を絞って研究を進めます。そこで得た成果を基に、計画やまちづくりなどをデザインしますが、その際は、研究で得た成果を核としながらも、多様な与条件を整理しながら、全体性をデザインします。また、多様なステークホルダーがデザインの変数として入るまちづくりでは、システム・オブ・システムズを解くことになり、最終的な解より、解に至るプロセスに心を砕くことも大半です。そこで得た経験を、更に次の研究へとフィードバックさせます。このように、デザインと研究を相互に繰り返すことで、より良い社会がデザインされていくと信じています。人間、向き、不向きがあるので、皆に博士学位の取得を勧めるつもりはありません。しかし、デザインに関わる人こそ、人生の中で、博士学位の取得を検討するのも良いのかもしれません。

 (2022年4月掲載)