村瀬 龍

略歴

2015年3月 京都大学工学部物理工学科 卒業
2017年3月 京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻 修士課程 修了
2021年3月 京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻 博士後期課程 研究指導認定退学
2021年4月 住友重機械工業株式会社 技術本部技術研究所 入社
2022年3月 京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻 博士後期課程 修了

メッセージ

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■現在の職務
放射線がん治療の一種であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に用いられる装置の研究開発を行っています。学生時代の研究とは内容が異なっており、新たに学ぶことが多いですが、放射線あるいは量子ビームという大きなくくりでは同じ分野であるため、学生時代に学んだことが役に立つ場面も少なくありません。

■博士学位を取得しようと考えた動機
いくつか動機はありますが、一番は修士課程まででは授業、就活などで忙しく、研究に充てられる時間が思ったよりも短いため、研究をやり切ることができないと感じたからです。自分が強く興味を持った分野の研究でしたので、せっかくやるならある程度形になるまでやり遂げたい、という思いがありました。
また、研究者の世界では博士学位が免許となること、特に日本以外では博士の学位を持っていない研究者は相手にされにくいということを聞いていたため、将来的に研究者として生きていくことを考えていた自分としては必要であると感じました。

■博士学位取得の動機と意義

私が現在所属している住友重機械工業の技術研究所では、博士学位取得が推奨されており、博士課程を経て入社される方も多くいます。民間企業の研究所ですので、外部から高い技術レベルの技術者として認定され、学会で幅広い人脈を持つことは研究開発及びビジネス上の大きな武器となります。
また、「ある分野の最先端の研究に携わり高い専門性を身に着け、ひとつの研究成果を博士論文という形にまとめ上げた」という経験と自信は、他分野の研究をすることになった際、あるいは研究職以外の職種に就いた際にも大いに役に立つと考えています。
さらに、博士課程で研究をする中で身に着けた数々のスキル(論文読解能力、論理的思考力、英文読解・執筆能力、文書作成能力、プレゼンスキル、コミュニケーション能力、データ解析能力、プログラミングスキル、PCスキルetc)は社会人になった際にとても役に立っていると感じています。

■進学の際不安に感じていたことについて
在学中の金銭面については少なからず不安を感じていましたが、博士課程には学振や奨学金、あるいは大学独自の支援制度といった金銭的な支援制度が充実しており、進学時に心配してたほど金銭に困ることはありませんでした。しかしながら学振をはじめとした給付型奨学金の採択率は依然として低いため、採択されるためには早いうちからある程度覚悟を決めて準備する必要があると感じました。

■後輩へのメッセージ
今これを読まれている学生さんの中には将来の進路に悩んでおられる方もいるかと思いますし、私も進学時にはこの選択で本当に良いものかとても悩みました。実際、在学中は試練の連続であり、自分の選択に疑問を持った時も多々ありました。しかし、それらの試練を乗り超えることで大きく成長できた今があると感じているので、今から振り返ってみてもそこまで悪い選択ではなかったのかなと思っています。
一度きりの人生、進路で悩んでおられる皆さんがご自身で振り返ったときに後悔のない選択をされることを切に願っております。

 2023年4月掲載)