わたしの WINDING ROAD ~京大の研究者になる~ #01 昔も今も、とにかく実験が大好き!

みなさんこんにちは!
京大工学「わたしの WINDING ROAD ~京大の研究者になる~」編集部、インタビュアーHです。

京大工学には、様々なターニングポイントを経て「京大の研究者になる」ことを選んだ、女性研究者が数多くいます。
工学に興味を持った学生生活から、現在の研究生活まで、これまでどんな道を歩んできたのでしょうか
工学研究科の若手職員が直撃インタビューしてきました!

本インタビューは、先生との会話をもとに読みやすく編集しています。

小さい頃から、夢は「研究者」

インタビュアーHがお話を聞いた女性研究者は、マイクロエンジニアリング専攻の名村今日子先生。

小さい頃から工作や顕微鏡を使った観察が好きだったという名村先生、研究者になるまでにどんな道のりを辿ったのでしょうか?

 名村先生①

名村先生、よろしくお願いします!

 

――先生が研究しているマイクロバブルとは、どういったものなのでしょうか?

「簡単にお伝えするなら、水中に素早く小さな気泡を作る研究をしています。小さな環境で水を流そうとしてもなかなか動かないですが、それが気泡を使って撹拌したりポンプを駆動させるように動かしたりすると、小さな環境でも水を動かすことができるんです。学部4回生から今までずっと同じ研究室で、小さな領域で熱を使って水を動かす研究をしていて、人に教わりながら様々な研究アプローチをしている中で、偶然マイクロバブルを発見しました。それ以来ずっとマイクロバブルを研究対象にしています。

 

――マイクロバブルは将来的にはどのように役立つ技術になるのでしょうか?

例えば血液検査での検体と試薬の撹拌や、スマホなどの局所的に熱を持った部分を冷やしたりする技術として役立てたいと思っています。

 

――携帯電話などの身近なところにも今後活用できるような研究なんですね!

「まだ基礎研究の段階なので、いつ具体的に活用できるかはわからないですけど。そういうことが出来たらいいなと思いながら、企業との共同研究も進めています。」

 

――先生は、小さい頃から工作や顕微鏡を用いた観察が好きだったとのことですが、どのような幼少期を経て京都大学工学部へ進学されたのでしょうか

「父が京大工学部電気電子工学科の出身で、実家も京大の近くだったので、自分もいずれ京大の理学部か工学部に行くんだろうなと思っていました。母は絵描きだったのですが、子どもの頃はよく母と一緒に実験をやっていた思い出があります。そんなこともあり幼い頃から研究が馴染み深い存在で、小学生に入るときくらいには研究者になろうと思っていました。

 

――小さい頃から将来の夢に「研究者」の選択肢があったんですね!研究者を身近に感じていたことに、ご家庭の環境は関係していたのでしょうか?

「子どもの頃から実験をしていた環境というよりも、様々な職業があるということを幼い頃から教えてもらえる環境が関係していたと思います。両親が『こういう職業もあるよ、やってみたら?』というスタンスだったので、研究者という道も躊躇なく選ぶことができました。もし家族が『そんなところ行ってどうするの』というスタンスだったら、少し迷ったかもしれないですね。

 

――進路選択の際、「研究者になる」道以外に迷った進路はありましたか?

「高校生の頃から博士課程に進学することを決めていたので、進路選択に迷いはありませんでした。高校時代は周りも親が研究関係という家庭が多くて、すでに研究者になることを決めている同級生が多かったですね。」

昔も今も、とにかく実験が好き!

――名村先生は京都大学の物理工学科に入学後、大学院工学研究科に進学されました。どのような大学生活を過ごしたのでしょうか

「大学時代は結構遊んでいました。テニスと軽音のサークルに所属していて、どちらにも積極的に参加してましたね。テニスの朝練をして授業に出て、放課後は軽音サークルに行って、そのまま夜遅くなってしまうこともありました。夏休み中もサークル活動とアルバイトで忙しく、家にほとんどいなかったので親に怒られたくらい。(笑)

 

――文武両道な学生生活だったんですね!

「でも、研究室に配属されてからは研究活動にも積極的でしたよ。生活の中心に研究を据えていました。

 

――名村先生は学生時代に留学されていたご経験があると他の記事で拝見したのですが、海外と日本の研究現場の差を感じることはありますか?

「日本のほうが研究者同士の交流が少ないように感じます。私が行った海外の大学では、福利厚生の一環として大学構内にコーヒーブレイクのスペースが設置されていて、決まった時間に勝手に集まってコーヒーを飲みながら交流する、ということを日常的に行っていました。

 

――研究室の垣根を超えて、気軽に交流できる場があったということですね。素敵です!

「そうですね。私も日本に帰国してから、日常的に他の研究室の人と顔を合わせる機会を作るために、コーヒーブレイクを導入して人が集う場所を作りました。コロナの影響もあって今はやめているのですが、気軽に交流できる場がもっとあれば良いのにな、と思います。」

 

――先生は京大の工学研究科博士課程を修了し、研究者としての道を歩むことになります。そもそも博士課程への進学にあたっては、ご自身で決断されたのでしょうか?

「決断という大層なものではなくて、博士号は父も取っていたし、自分も取っておけばいいか、くらいの軽い気持ちで博士課程へ進みました。博士号を取った後にアカデミックな就職先が見つからなければ、企業に就職すればいいか、くらいに考えていました。

 

――研究者となった今、先生の研究や、職業としての研究者の魅力は何でしょうか?

「私は人にあれこれ言われるのが好きではなくて、自由にやりたいタイプなんです。そこにはもちろん責任が伴いますが、自分で好きなことをやれる『研究者』という職業は魅力的でした。自分の意志で自分のやりたいことが決められるところ、自分の仕事のペースを管理しなくてはいけないけど、そのぶん自由なところが良いと思っています。特に、私の研究室ではボスである鈴木基史先生が奔放に育ててくれているのも有難いところです。」

 

――今も実験は好きですか?

「はい!私はとにかく実験が大好きなんです。実験室に行って、学生と一緒になって実験をして、結果が出れば大喜びしてしまいます。学生と一緒に頑張ってアイデアを出し合って、結果を出して、またアイデアを出して…という日々は、まるで毎日が学園祭みたいで楽しいです。」

 名村先生③

実験室にいた学生たちとの一枚
 
 

――先生は現在小さいお子さんの子育て中とお伺いしたのですが、忙しい研究生活と家庭との両立は大変じゃないですか?

「幸い夫が協力的で、家事育児の半分を担当してくれているので助かっています。私が育休から復帰したタイミングで、入れ替わりで夫が育休を取ってくれ、お互いに協力して子育てしています。子どもが生まれる前は遅くまで研究室にいたこともありましたが、今は工夫して早めに切り上げるようにしています。」

 

明るくはつらつとした印象の名村先生、大好きな実験を楽しんで、研究に打ち込まれてきた芯の強さを感じました。

 

博士課程を目指す女子学生へメッセージ

――最後に、博士課程への進学を検討中の女子学生へのメッセージをお願いします!

「もしも性別を理由に進学をためらっている人がいるなら、それを理由に諦めてほしくないと思います。好きなことをして生きたらいいし、博士課程を取ってみたいという気持ちが少しでもあるなら、その気持ちを大切にしてほしい。もし周りから何か言われても、自分の夢は諦めないで!と伝えたいです。」

名村先生②

学生と組み立てた、ここにしかない装置と一緒に
 
 

ご自身が夢に向かってまっすぐ歩いてきたからこその、説得力のある言葉をいただきました。
名村先生、ありがとうございました! 

研究者情報

ドキュメントアクション