【研究成果】表層糖鎖パターン解析による細胞外小胞の多様性評価 -糖鎖を改変し、細胞との相互作用を制御する-

 高分子化学専攻の下田麻子 特定研究員、秋吉一成 教授らの研究グループは、舘野浩章 国立研究開発法人産業技術総合研究所研究グループ長、瀬尾尚宏 三重大学特任講師、珠玖洋 同特定教授との共同研究により、新規細胞間情報伝達機構や生体由来のナノキャリアとして注目されている細胞外小胞(Extracellular vesicles; EV)について、その表層糖鎖のパターンがEVの多様性の指標となり得ること、そしてEVの細胞間相互作用に重要なことを明らかにしました。糖鎖は細胞の特徴を表す「細胞の顔」とも呼ばれ、他の細胞、細菌、ウイルス、毒素との結合に重要な役割を果たしています。本研究では、エバネッセント波励起型蛍光検出レクチンマイクロアレイ法を用いて、EVの表層糖鎖のパターン解析を網羅的に行い、分泌する細胞の種類や粒子のサイズ、EVの回収方法の違いによってその糖鎖パターンが異なることを見出しました。さらに、糖鎖切断酵素や糖転移酵素を用いて表層糖鎖を改変することで、細胞との相互作用を制御できることがわかりました。本研究で提案するEVの多様性の新規指標は、EVの品質管理や標準化のひとつの指針となり、また、特定のEV集団を分離、精製する手法の開発、疾患のバイオマーカー探索、さらに、ドラッグデリバリーシステム開発へと繋がることが期待されます。

 本研究成果は、2021年12月1日に、国際学術誌「Small Methods」のオンライン版に掲載されました。

詳しい研究内容について

表層糖鎖パターン解析による細胞外小胞の多様性評価 ー糖鎖を改変し、細胞との相互作用を制御する― PDF File

研究者情報

下田麻子 京都大学教育研究活動データベース
秋吉一成 京都大学教育研究活動データベース

論文情報

【タイトル】
Assessment of surface glycan diversity on extracellular vesicles by lectin microarray and glycoengineering strategies for drug delivery applications
(レクチンマイクロアレイによる細胞 外小胞表面糖鎖の多様性評価と糖鎖工学を基盤としたドラッグデリバリーシステム応用)

【著者】
Asako Shimoda, Risako Miura, Hiroaki Tateno, Naohiro Seo, Hiroshi Shiku, Shin-ichi Sawada, Yoshihiro Sasaki, and Kazunari Akiyoshi

【掲載誌】Small Methods
【DOI】
https://doi.org/10.1002/smtd.202100785

関連リンク

高分子化学専攻
秋吉研究室
 

ドキュメントアクション