【研究成果】周期構造の対称性制御で近赤外光の閉込めに成功―ナノ粒子をずらして光の分布を操作し、レーザやセンサの発展に寄与―

材料化学専攻の村井俊介 助教、Libei Liu 同博士課程学生、田中勝久 同教授らはオランダ、スペインのグループらとの国際共同研究において、ガラス基板上に周期的に並べたナノ粒子内に近赤外光を閉込める技術を開発しました。ナノ粒子の位置やサイズをずらすことで構造の対称性を崩し、閉込め効率が非常に高い「連続スペクトル中の束縛状態(Bound States in the Continuum, BIC)」を制御できることを実験と計算の両面から示すことに成功しました。

ガラスなどの平面上に周期的にナノ粒子を並べると、その周期に応じた波長の光を平面内に閉込めることが可能です。本研究では、周期に加え構造の“対称性”を制御することでBICと呼ばれる、さらに強い光閉込めを実現することを目的としました。そのために、サイズの異なる二種のシリコンナノ粒子を交互に並べた周期構造と、同じサイズのシリコンナノ粒子を、位置をずらして並べた周期構造を準備しました。両構造の周期は同じですが対称性が異なります。光の閉込めを調べたところ、両構造に起源の異なるBICが生じることがわかりました。これらの実験結果はナノ粒子に生じる磁気および電気双極子を考慮したモデルにより説明され、面内と面外、異なる振動方向の2種の双極子がBIC発現に関わっていることが明らかになりました。 本研究成果は、直感的かつ広範囲の周波数に拡張可能なBIC調整手法を提供するものであり、光閉込めによるレーザやセンサ、非線形光学への応用が期待されます。

本研究成果は、2022年8月26日(現地時刻)に国際学術誌「Laser & Photonics Reviews」にオンライン掲載されました。

詳しい研究内容について

周期構造の対称性制御で近赤外光の閉込めに成功―ナノ粒子をずらして光の分布を操作し、レーザやセンサの発展に寄与―

研究者情報

村井俊介 京都大学教育研究活動データベース

論文情報

【タイトル】
 Engineering bound states in the continuum at telecom wavelengths with non-Bravais lattices
(非ブラベ格子による光通信波長域でのBIC制御)

【著者】
村井俊介、Diego R. Abujetas, Libei Liu, Gabriel W. Castellanos, Vincenzo Giannini, José A. Sánchez-Gil, 田中勝久, Jaime Gómez Rivas

【掲載誌】Laser & Photonics Reviews
【DOI】10.1002/lpor.202100661

関連リンク

材料化学専攻
田中勝久研究室

ドキュメントアクション