技術の取得

技術専門職員 久本 泰明

久本 泰明1972年9月に工学部石油化学教室に採用されてから37年間、この間、教室名は、物質エネルギー化学専攻へと変わりましたが、質量分析一筋で、お世話になってきました。

9月採用となったのは、その前の1年数か月間、ヘリウムの液化機の運転アルバイトに来ていて、その縁での就職となったわけです。

採用当時の所属は、米澤研究室でしたが、改組や教授の定年退官などにより、乾研究室、植村研究室を経て、現在は大江研究室の所属です。

仕事上は、質量分析担当の上野徹先生のご指導を受けました。

採用後の約3ヵ月間、毎週様々なテーマで、マンツーマンの講習を受けました。

講習の後は、必ず実習があり、結構厳しい内容であったと記憶しています。

ガラス細工、写真乾板の現像、コンパレーターの読み取りなど、質量分析とは直接関係無い様に思えますが、当時は質量分析をやる上で、必須の技術でした。

ガラス細工は、EI測定用のサンプルチューブの作成、試料導入系のガラス配管のメインテナンス、イオン源の密封などの用途がありました。

写真乾板は、高分解測定時のイオンビーム検出に使われるもので、標準試料、未知試料、両者混合で1セット3回の測定を行っていました。当時の金額で、1枚約1万円の乾板でしたが、それを32段に分けて使用していました。1枚の乾板で、最大8検体の測定が可能でした。現像は、専用の暗室が設置されており、写真の全紙引き伸ばしも可能でした。

コンパレーターは、乾板のアナログデータ読み取り器で、実は、この訓練が一番印象に残っています。

初心者は習性として、ピークが一番よく見える位置に顔や目線を動かそうとするのですが、読み取り姿勢を一定にする様に、繰り返し訓練を重ねました。読み取り値の再現性を確保するためです。

読み取り値が安定すると、フォートランでのMS解析プログラムの作成の講習に入り、測定データの解析を学びました。

技術の取得講習とは別の機会ですが、上野先生のご専門の速度論の講義を受講しました。

また、ご配慮により、教養部で、児嶋先生の有機化学概論の講義を1年間受講しました。教養の講義は、試験も受ける様にとのご指示があり、大変でした。

定年退職の日まで質量分析に関わって来れたのは、採用当初の一連のご指導があったからこそだと、感謝の念を新たにしています。

一昨年度の工学研究科技術部の発足にあたり、技術部と研究室の両方の所属となっているのですが、技術部では、研修委員長の役を仰せつかっています。従前に比べて、制度研修として充実するのは喜ばしい事なのですが、職人的に鍛えられると言う点では、もどかしい感が残ります。

技術の継承・発展について考える機会の多い昨今です。

(技術専門職員 物質エネルギー化学専攻)