現状と大学とのつながり

西山 祐平

西山祐平_web.jpg 食べること寝ることを除けば、今の活動は概ね三つに分けられる。インタープリズム社でのソフトウエアエンジニアリング、エンジニアリング関連の勉強、そして化合物列挙アルゴリズムの研究。折につけ大学時代に立ち戻りつつ紹介していこうと思う。
 まずはインタープリズム社での過ごし方。色々である。実感が伝わらないのを承知で、とにかく色々なのだ。ある時は、家電メーカーの開発サイクル管理システムの設計・実装・インフラのメンテナンスまで。またある時は、機械学習の基礎理論と適用例について、調査と実践。最近は、WEB ブラウザに3D グラフィックスを表示する技術仕様と、それを実用化したライブラリについて理解を進めている。ソフトウエアエンジニアリングは様々な世界の情報を取り扱う。そして次々と移りゆく技術に合わせて「知らねば学び、無ければ作る」風土を感じる。今はその環境に浸かって、色々と手を伸ばしているところだ。
 今の状況と学生時代を絡めて思う、脳みそと興味の間口を広げておいて良かった。当時何となしに選んだ数理工学専攻は、分野横断の連続だった。講義毎に興趣の違う問題を別々の(のように見える)専門的な切り口で扱う日々を送れば、自然に興味の間口も広がるものだ。あるいは、以前通った興味に出会ったりするのも面白い。学習理論はどこを切っても統計と最適化の数理のカタマリという印象だったが、修士課程にかけて要素や発展の経緯を学んでいたからこそ、興味割り増しで立ち向かえている。
 帰宅した後、ほとんどはエンジニアリング関連の勉強に手をつける。これも大学時代にリンクすると、講義の後に気になることを研究室や図書館で調べるのと同じ。今も昔も変わらず、気になったらもう放っておけないのだ。実際のところ大いに楽しい。就業を機に興味が広がった一方で、化合物列挙アルゴリズムの研究は研究室配属時から続いている。内容に深く立ち入る余裕がなく残念だが、継続する動機と最近の成果を紹介する。
 研究対象の興味深さ以上に、大学で行うような研究の時間を手放すのが惜しかった。就業後より強く実感しているが、研究に求める厳密な思考過程や理論的な完成度と、エンジニアリングに求める現実的で実践的な判断や思考は種類が違う。研究室在籍時は「入力と出力を完全かつ明確に、飛躍なく整理された論理を」と、優秀な諸先輩や先生方にピシピシ教鞭を頂戴していた。当時のような生産性よりも論理の完成度を優先する機会は、比較的少ないと思う。だから大切にしたい。
 今はエンジニアリング方面に時間を割いていて、作業自体は細々としたものだが、一つ紹介できる成果がある。今年の 1 月に Asia Pacific Bioinformatics Conference 2018 に論文が採択され、口頭発表の機会を得た。論文の投稿にあたって、京都大学化学研究所バイオインフォマティクスセンターの阿久津達也教授、情報学研究科数理工学専攻離散数理分野の永持仁教授ならびに Aleksandar Shurbevski 助教に原稿の編集とチェックのご協力を頂いた。簡略ながらここに厚く御礼申し上げます。
 好奇心に忠実に生きている印象が伝わっていれば幸いだ。唯一と言っていい私の取り柄なので。

(インタープリズム株式会社)