水素乱流燃焼特性の解明を目指して

九州大学大学院総合理工学研究院 甲斐玲央

 私は,2016年度に京都大学工学部物理工学科機械システム学コースを卒業後,工学研究科機械理工学専攻に進学し,2022年3月に博士(工学)を取得しました。学部4回生の研究室配属後,博士号の取得まで黒瀬良一教授にご指導いただきました。また,在学中は研究室の合併もあり,黒瀬先生に加え,松本充弘先生,若林英信先生にもお世話になりました。現在は九州大学の総合理工学研究院/総合理工学府/工学部融合基礎工学科にて准教授を務めています。学部4回生から現在に至るまで,一貫して燃焼に関して,主に数値シミュレーションを用いて研究をしてきました。
 大学院生時代を振り返ってみると,博士後期課程への進学を決めたことが現職にも繋がっており,人生の大きな転機でした。大学院入試を受けた当初は,進学を考えてもいませんでしたが,研究を行う中で,これまで未解明だったもの,できなかったことに対する課題を解決していく楽しさを知り,進学を決めました。時折,この楽しさを忘れそうになることもありますが,常に胸に留めておきたいと改めて思います。また,在学中は,国内外を問わず,学会,研究会に参加する機会を多くいただき,多くの研究者と知り合い,議論することが出来ました。この経験,繋がりは現在の研究活動にも活きており,黒瀬先生に感謝するとともに,自身も指導学生に様々な経験の場を与えられるような教員になりたいと考えています。
 現在は,研究テーマの一つとして,水素燃焼器開発を念頭において,水素の乱流燃焼特性,特に乱流燃焼速度に関する研究を進めています。水素は燃焼時に二酸化炭素を排出しないため,2050年カーボンニュートラルの実現に向けて,ガスタービンエンジン等の燃焼装置において,その燃焼利用が進められています。水素は従来の化石燃料等と比較すると,燃えやすく,燃焼速度が大きいという特徴があります。そのため,既存の燃焼装置において,単純に燃料を置き換えただけで利用することは難しく,新たに専用の燃焼器を開発する必要があります。
 水素燃焼器の開発,特に予混合燃焼方式を採用した場合の課題の一つに「逆火の抑制」が挙げられます。逆火とは,火炎が流れに逆らい,意図せず上流に遡る現象であり,燃焼装置の破壊に繋がり得る現象です。逆火は,燃焼速度が未燃ガスの流速を上回った際に起こる現象のため,燃焼速度と流れの制御が抑制の鍵となります。このうちの燃焼速度に着目して研究をしています。燃焼速度は,未燃ガス温度,当量比,圧力,火炎伸長等によっても変化しますが,特に希薄乱流水素火炎では,乱流,および水素の高い拡散性に起因する熱-拡散不安定性による火炎面積の増大も影響します。これらの影響は分離し難いものもありますが,燃焼速度の制御に向けて,それらの影響を整理すべく,これからも指導学生とともに,研究に励んでゆきます。

(機械理工学専攻 2022年3月博士課程修了)