「なるほど!」の瞬間に立ち会うよろこび
技術主任 丸岡恵理

学生実験では120名の学生が1グループ40名ごとに分かれ,様々な専門実験を約2か月ごとにローテーションし受講します。私は,その1つである有機化学実験の運営業務を主に担当しており,学生の指導やサポートを行っています。有機化学実験の面白さ,楽しさを伝えるということを教員とTAとの共通の方針として取り組んでいます。分かりやすく伝えることや,一緒に考えることで学生の理解が深まり,前向きな反応を得られる点にやりがいを感じています。
学生実験では,理論だけでは得られない「体験的な理解」を深められるよう意識しています。座学で学んだ反応式を実際に自分の手で試してみることで,抽象的な知識が現実の現象として結びつく瞬間があります。その「なるほど!」という表情を間近で見るのが,私にとって何よりの喜びです。
座学では,「AとBを反応させるとCができる」というような原理を学びますが,実際に実験すると反応に使われなかった原料Aが残っていたり,副生成物Dができていたりします。得られた物質をそのまま分析装置で測定しても明瞭な結果が得られず,反応が上手く進行したのか判断ができません。純粋な生成物を合成できていると考えている学生達は,理論と現実の違いに直面します。そこで不純物を除去するために再結晶という温度による溶解度の差を利用した精製方法を学ぶことになります(小中学校のときに沢山のミョウバンをお湯に溶かした後,ゆっくりと冷ましてきれいな大きい結晶を作ったことがある方もいるのではないでしょうか)。フラスコ中の液体に,透明で美しい結晶が次々と湧き出てくる様子を見て,学生は「きれいな結晶が沢山でてきた!」と嬉しそうに話してくれます。そのような姿を見て私もわくわくし,教える楽しさとやりがいを強く感じています。有機化学実験では,加熱,抽出,中和,洗浄,測定といった様々な基本操作が出てきます。一口に加熱といっても温度や昇温スピード,攪拌速度など気を付けるポイントは多く,自分の手で行うことで得られる気づきが沢山あります。そういった気づきを自分で観察し考えながら進めていく学生たちの背中を見守り,時にそっと後押ししています。
学生実験は,様々な分野に直に触れることのできる貴重な機会であり,研究の入口となる大切な科目です。私自身がわくわくを持ち続け「自分で考える面白さ」や「化学の楽しさ」をこれからも伝えていきたいと思います。卒業した学生たちが活躍することを楽しみにしています。
(京都大学総合研究推進本部 兼 工学研究科技術室)
