原子から加工までを貫く材料変形研究

助教 宮澤直己

 エネルギー科学研究科・エネルギー応用科学専攻 資源エネルギープロセス学分野(浜研究室)で助教として,構造用金属材料の変形・加工に関する研究に従事しております。私は2019年3月に同研究科博士後期課程を修了後,東京工業大学(現・東京科学大学)物質理工学院材料系で助教として勤務し,2023年3月より現所属に着任いたしました。 学生時代から東京工業大学在籍時までは,主に分子動力学計算や第一原理計算を用いた数値解析に取り組んでまいりました。金属材料の変形は,転位・空孔・粒界といった格子欠陥の挙動が積み重なって現れる現象であり,私はその最も基礎的な階層に位置する原子スケールの機構に興味を持ち,その振る舞いを理解・再現するためのシミュレーション手法の構築と物理的解釈に努めてきました。
 京都大学に戻ってからは,こうした原子レベルのモデリングに加えて,力学試験や電子顕微鏡観察などの実験的手法,さらには有限要素解析を用いたミリオーダーの変形・加工プロセス解析にも取り組み,研究の幅を大きく広げております。実験と計算,微視から巨視のスケールを往復することで,これまで個別には捉えきれなかった現象同士のつながりが見え,材料変形をより立体的に理解できるようになったと実感しています。 また,もともと材料学を中心に研究を進めてきましたが,着任後は塑性加工学をはじめとする実用に直結する工学分野にも踏み込みました。いずれも「材料の変形」を対象とする点では共通しますが,材料工学と加工学ではものの見方やアプローチが異なります。両者を行き来することで,自身の視野が自然と拡張され,これまで気づかなかった現象の背景や,分野横断的な価値観の違いにも改めて目を向けるようになりました。
 研究を続ける中で,材料の世界が観察スケールによって全く異なる表情を見せることに改めて魅力を感じています。原子スケールでは一本の転位が一瞬にして走り抜け,微視組織ではその軌跡の蓄積が観察され,巨視的には一枚の板材が大きく成形される,こうした複数の景色をひとつながりの現象として理解するプロセスは,私にとって研究の面白さを再発見することに繋がっております。さらに,材料工学・機械工学・計算科学といった異なる分野・文化を横断すること自体が,新しい発見や着想につながることを日々感じています。
 今後もこうしたスケール横断的・学際的な視点の広がりを活かし,「自分だからこそできる研究」の追求を続けてまいりたいと考えております。皆様方には今後ともご指導ご鞭撻を賜る場面があるかと存じますが,どうぞよろしくお願い申し上げます。

(エネルギー科学研究科)