授業科目名 : 励起物質化学

科目コード 10H207
配当学年 修士課程・博士後期課程
開講年度・開講期
曜時限
講義室
単位数 1.5
履修者制限
授業形態 講義
使用言語 日本語
担当教員 所属・職名・氏名 関係教員,

授業の概要・目的

光または電離放射線の作用によって発生する電子励起分子,フリーラジカル,ラジカルイオン等の短寿命活性種が関わる生命科学の諸現象を紹介し,物理学,化学,生物学,薬学,医学の諸分野を横断する学際的な研究課題について,分子レベルで解明するための基礎と研究手法を理解させる.

成績評価の方法・観点及び達成度

出席率(30%),レポート課題(35%),筆記試験(35%)を総合して100 点満点とし,4 段階(優: 100~80 点/良: 79~70 点/可: 69~60 点/不可: 60点未満)で成績を評価する.

到達目標

・ 光物理学過程を経て光化学過程に到る電子励起分子のエネルギー緩和過程を理解し,熱化学過程との違いを学ぶ.
・ 光化学と放射線化学の反応特性を比較し,類似点と相違点を理解する.
・ 電子励起分子,フリーラジカル,ラジカルイオンの分子構造と反応性の特質を理解する.
・ 液相における電子移動反応の様相を知り,Marcus 理論を用いて解釈する方法を学ぶ.
・ レーザーフォトリシスやパルスラジオリシス等の原理,及びこれらを用いた短寿命活性種の研究法を学ぶ.
・ 活性酸素種や水分子の反応性と生命科学における役割を理解する.
・ DNAやタンパク質等の生体分子の構造と短寿命活性種に対する反応性の関係について学ぶ.

授業計画と内容

項目 回数 内容説明
光と電離放射線:短寿命活性種の発生 1 ・ 講義全般についてのガイダンス
・ 光と分子の相互作用:光の吸収と発光,光化学の第一・第二法則
・ 電離放射線と分子の相互作用:光電効果,コンプトン効果,電子対創生
・ 光または電離放射線による電子励起分子,フリーラジカル,ラジカルイオンの生成過程
・ 熱化学反応による電子励起分子,フリーラジカル,ラジカルイオンの生成過程
電子励起分子の物理化学的性質 1 ・ 電子励起過程の物理化学(基礎知識の整理)
・ 電子励起分子に及ぼす溶媒効果
・ 電子励起分子の酸性度と酸化還元電位:励起エネルギーの効果
・ 電子励起エネルギーの移動
トピックス紹介:機能性人工核酸 1 ・ DNAやRNAの糖鎖部を変換した機能性人工核酸の開発と応用・ ナノ材料としての機能性人工核酸の開発と応用・ 光機能性分子を導入した人工核酸の開発と応用
電子励起分子・フリーラジカルの反応性 1 ・ 電子励起分子の反応性:結合解離,光イオン化,エキシマー・エキシプレックス形成,酸化還元反応,光酸素酸化,光二量化,光異性化,光転移
・ フリーラジカルの反応性:溶媒和電子の反応,水素引抜き
電子移動反応:Marcus 理論 1 ・ 電子移動反応の速度論的表現
・ 光電子移動反応:Rehm-Weller の速度論スキーム
・ 電子移動反応における自由エネルギー変化(ΔGo)
・ 活性化自由エネルギー(ΔGo≠)と自由エネルギー変化(ΔGo)の関係
・ 光電子移動反応に対するMarcus 理論の適用
レーザーフォトリシス・パルスラジオリシス 1 ・ レーザーフォトリシスとパルスラジオリシスの原理
・ 電子励起分子,フリーラジカル,ラジカルイオンの過渡吸収スペクトル
・ 電子励起分子の発光:検出と解析
・ レーザーフォトリシスとパルスラジオリシスの応用例:速度論的解析,溶媒の極性,電子励起エネルギー移動,エキシマー形成,エキシプレックス
生体内活性酸素種の生成 1 ・ 生体内活性酸素種の生成機構:一重項酸素,スーパーオキシドアニオンラジカル,水酸ラジカル,ペルオキシルラジカル,アルコキシルラジカル,一酸化窒素ラジカル,二酸化窒素ラジカル
・ 中間試験
活性酸素種の検出と反応性 1 ・ 活性酸素種の検出:分光学的手法,化学的手法・ 活性酸素種の化学的性質と反応性・ 活性酸素種の生物医学的性質:内因性酸素ラジカルの毒性,酸素ラジカルに対する防御
核酸・DNAの電子励起状態と反応性 1 ・ 核酸塩基(プリン・ピリミジン)の電子励起状態:一重項エネルギー順位と蛍光発光,三重項エネルギー順位とリン光発光,nπ*励起状態,ππ*励起状態,量子収率,三重項-三重項吸収
・ 電子励起状態におけるピリミジン,プリン,及び関連誘導体の反応性:ピリミジンの光二量化,核酸塩基の一電子酸化還元,DNA鎖切断,DNA-DNA間架橋,DNA-タンパク質間架橋
・ DNA内の遠距離電荷輸送:光増感酸化・還元,電子の移動,ホールの移動
核酸塩基ラジカル・DNAラジカルの反応性 1 ・ 電離放射線の間接作用:水の電離を経由して発生する水酸ラジカル,水和電子,水素原子による核酸塩基ラジカル及びDNAラジカルの生成
・ 水溶液のレーザーフォトリシス:核酸塩基ラジカル及びDNAラジカルの生成
・ 核酸塩基ラジカル:酸化性ラジカルと還元性ラジカル,酸性度,分子内ラジカル移動反応,ラジカル-イオン変換
・ DNA二重鎖切断反応
・ 光増感反応:水素引抜き,電子移動,一重項酸素酸化,DNA塩基損傷
アミノ酸・タンパク質の電子励起状態と反応性 1 ・ アミノ酸・タンパク質の電子励起状態と反応性:基底状態と三重項励起状態の吸収特性,一重項励起状態と三重項励起状態の反応性,一重項酸素との反応
・ アミノ酸ラジカルの生成と反応性:一光子吸収過程と二光子吸収過程,酸化性ラジカルとの反応,還元性ラジカルとの反応
・ タンパク質内電子移動:ペプチド基のラジカル変換,一電子酸化種・一電子還元種によるラジカル変換
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教科書

教科書を使用せず,講義内容に沿った資料を配布する.各講の資料は,当該講義日のほぼ1週間前までに下記のURL に掲載しておくので,予め各自でダウンロードして講義時に持参すること.尚,ダウンロードに必要なパスワードは,開講日に開示する.
http://www.ehcc.kyoto-u.ac.jp/eh32/home/lecture/2004eshc/material.htm

参考書等

Bensasson, R. V.; Land, E. J.; Truscott, T. G.; EXCITED STATES AND FREE RADICALS IN BIOLOGY AND MEDICINE; Oxford Science Publications: Oxford, 1993.

履修要件

量子化学及び分子分光学について,学部レベルの基礎知識をすでに修得していることを前提として講義を進める.

授業外学習(予習・復習)等

授業URL

その他(オフィスアワー等)

隔年開講科目。平成30年度は開講しない。