ナノ空間分⼦を紡いでつくる、多孔性ナノ⽷の開発 ー多孔性と柔軟性をあわせ持つ新材料ー

合成・生物化学専攻 宮⽥彩名 ⼯学研究科博⼠後期課程学⽣と化学理工学専攻 古川修平 教授(兼 京都⼤学アイセムス(⾼等研究院 物質ー細胞統合システム拠点:WPI-iCeMS))らの研究グループは、ファンデルワールス⼒という弱い⼒を利⽤して分⼦を⼀次元的につなぎ合わせることで、新しい多孔性材料の開発に成功しました。この技術を⽤いることにより、従来は脆く応⽤範囲が限られていた多孔性材料において、合成過程の加⼯性が向上し、柔軟な多孔性材料の設計が可能となりました。
2025 年のノーベル賞の対象となった多孔性配位⾼分⼦(MOF)と呼ばれる多孔性材料は、精密に設計された細孔を有し、ガス貯蔵や分離材料としての応⽤が期待されています。⼀⽅で、MOF は分⼦同⼠が強い結合によって三次元的な網⽬構造を形成する結晶性材料であり、硬いが脆いという特性を有しています。そのため、実⽤化に向けては機械的柔軟性を得ることが重要な課題となっていました。本研究では、分⼦の「接続性」に着⽬し、ナノ空間を持つ分⼦を弱い相互作⽤を⽤いて⼀次元的に並べることで、多孔性を有するナノ⽷の開発に成功しました。具体的には、⾦属錯体多⾯体(MOP)と呼ばれるナノ空間を持つ分⼦を⽤い、⾃⼰集合化により分⼦を整列させることで、幅約 15 ナノメートルの多孔性ナノ⽷を合成しました。MOP 分⼦を三次元的に接続した結晶性材料は剛直で脆いのに対し、⼀次元的に接続した多孔性ナノ⽷からなるエアロゲル材料は、⼤きな圧縮に対しても柔軟に変形できることが明らかになりました。また、分⼦が強い化学結合で接続した材料では、⼀度結合が切れると元の構造に戻ることが困難です。⼀⽅、本研究の多孔性ナノ⽷は分⼦同⼠が引き合う弱い⼒(ファンデルワールス⼒)によって形成されているため、振とうなどの⾮常に⼩さなエネルギーでも MOP 分⼦の会合・解離状態を可逆的に制御することが可能です。これにより、多孔性ナノ⽷が絡み合うことで形成されたエアロゲル材料は、鋳型に合わせて⾃在に成形できる⾼い加⼯性を⽰しました。
本研究で⽰された材料設計の考え⽅は、MOP 分⼦だけでなく、さまざまな多⾯体型分⼦にも適⽤可能です。そのため、ガス分離やガス貯蔵など、成形体としての多孔性材料が必要とされる産業分野において、その実⽤化を後押しする新しい材料設計指針につながることが期待されます。

本成果は 2026 年 3 ⽉ 19 ⽇(⽇本時間)に、⽶国出版社 American Chemical Societyの雑誌である「Journal of the American Chemical Society」オンライン版で公開されました。

研究詳細

ナノ空間分⼦を紡いでつくる、多孔性ナノ⽷の開発 ー多孔性と柔軟性をあわせ持つ新材料ー

研究者情報

論文情報

タイトル

“One-dimensional van der Waals Porous Fibrils Assembled from Metal-organic Polyhedra”
(参考訳:⾦属錯体⼋⾯体の⾃⼰集合でつくる⼀次元多孔性ファンデルワールスファイバー) 

著者

Ayana Miyata, Shun Tokuda, Mako Kuzumoto, Guan-Sian Lee, Masataka Yamashita,Taichi Nishiguchi, Masaki Negoro, Brian R. Pauw, Yi-Tsu Chan, Kazuyoshi Kanamori, Kenji Urayama, Kunihisa Sugimoto, Shuhei Furukawa

掲載誌

Journal of the American Chemical Society, 2026, 148, 6716–6726.

DOI 10.1021/jacs.5c21654 
KURENAI

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