"水に溶けない有機物"を"水により還元変換"する光触媒系の開発 ―人工光合成の適用範囲拡張に向けて―

    物質エネルギー化学専攻の中田 明伸 講師、板垣 廉 博士後期課程学生、阿部 竜 教授らのグループは、中央大学理工学部 応用化学科の張浩徹 教授と共同で「水に溶けない有機物を水により還元変換する光触媒系」を開発しました。
    緑色植物の光合成反応を模倣し、水を反応剤(電子・プロトン源)として用い、光エネルギーにより化合物を合成する「人工光合成」に関する研究は半世紀ほど前から行われてきました。人工光合成は、クリーンで豊富に存在する水を反応剤にすること、また投入した光エネルギー(理想的には太陽光エネルギー)を生成物中に蓄えることで、既存のエネルギー資源(化石資源や電力など)を必要とせず有価物を獲得できる可能性がある有望な技術として期待されています。しかしながら、従来の人工光合成研究では基本的に「水の光分解による水素生成」「CO2の還元によるC1化合物生成」にその反応適用例が限定されていました。
    本研究では、水と混和しない有機溶媒からなる二相溶液を反応場とし、「水相で水の酸化」「有機相で有機物変換」を機能するそれぞれ異なる光触媒を導入した新しい光触媒系を構築しました。本研究グループがこれまで開発してきた、"光エネルギーにより自発的に二相溶液間を移動し電子を運搬する"フェロセニウム/フェロセン分子によって異なる溶液相で分離された酸化と還元反応を結びつけることにより、"水に溶けない有機物""水を反応剤として変換する"ことに世界で初めて成功しました。

    本研究成果は、2025419日に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。

    研究詳細

    "水に溶けない有機物"を"水により還元変換"する光触媒系の開発 ―人工光合成の適用範囲拡張に向けて―

    研究者情報

    書誌情報

    タイトル

    Phase-Migrating Z-Scheme Charge Transportation Enables Photoredox Catalysis Harnessing Water as an Electron Source
    (相間移動型Z-スキーム電荷輸送が可能にする水を電子源とした光レドックス触媒反応)

    著者

    Ren Itagaki, Akinobu Nakada, Hajime Suzuki, Osamu Tomita, Ho-Chol Chang, Ryu Abe

    掲載誌

    Journal of the American Chemical Society

    DOI

    10.1021/jacs.5c02276

    KURENAI

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    物質エネルギー化学専攻

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