精神科デイケアで24か月 患者の話を聴く「対話ロボット」を実証 ―新設計「目標や楽しみを考える話題」を8割が選択、対話で「元気が出た」状態に―
機械理工学専攻 塩見 昌裕 教授は、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(以下ATR)深層インタラクション総合研究所のグループ、長崎大学、大阪大学、奈良先端科学技術大学院大学と共同で、精神科デイケアに通う患者が自分の考えを整理することを支援する「対話ロボット」を開発しました。そして社会医療法人 寿栄会 ありまこうげんホスピタル 精神科デイケア「桜の咲く丘」において、24か月にわたる実証研究を行いました。
前半14か月は利用者・スタッフ・臨床家の意見を反映しながらシステムの改良を重ね、後半10か月は完成したシステムを評価しました(図1)。利用者は、従来の支援システムが主に扱ってきた「悩みや後悔に向き合う話題」か、現場の要望から新たに設計した「目標や楽しみを考える話題」かを選び、ロボットの問いかけに答えながら状況・気持ち・考えを言葉にしていきます。対話の前後には、参加者自身が「調子の良さ」「意識のはっきりさ」「気分の明るさ」を0〜100点(0が最も悪い状態、100が最も良い状態)で答えました。
分析の結果、1回の対話のあとで「調子の良さ」と「意識のはっきりさ」の自己評価が有意に向上することが確認されました(図2)。つまり、ロボットと話したあとは「元気が出た」状態になっているといえます。この変化はロボットと話す度に同じように生じており、参加回数を重ねても弱まりませんでした。対話後の感想も、6割以上が前向きな気づきや変化に関するものでした。また、選ばれた話題の8割以上は新たに設計した目標や楽しみを考える話題であり、悩みに向き合う対話を土台としつつ、目標や良い経験を語る対話も選べることの重要性を示しています。
これらの知見は、人手が限られる精神科医療の現場で、患者に前向きな変化をもたらす支援技術を設計するための基礎的知見になることが期待されます。
研究詳細
精神科デイケアで24か月 患者の話を聴く「対話ロボット」を実証 ―新設計「目標や楽しみを考える話題」を8割が選択、対話で「元気が出た」状態に―
研究者情報
- 塩見 昌裕 京都大学教育研究活動データベース
論文情報
| タイトル |
A Social Robot for Self-Monitoring Support in Psychiatric Daycare: A 24-Month Iterative Development and Practical Evaluation |
|---|---|
| 著者 |
Takuto Akiyoshi, Hidenobu Sumioka, Hirokazu Kumazaki, Junya Nakanishi, Hirokazu Kato, and Masahiro Shiomi 秋吉 拓斗(ATR)、住岡 英信(ATR)、熊崎 博一(長崎大学)、中西 惇也(大阪大学)、加藤 博一(奈良先端科学技術大学院大学)、塩見 昌裕(ATR/京都大学) |
| 掲載誌 |
ACM Transactions on Human-Robot Interaction |
| DOI | https://doi.org/10.1145/3857348 |
| KURENAI |
