高速自己変化可能なフォトニック結晶による高ピーク出力・短パルス光の発生ー超スマート社会を支える高精度光センシングやレーザー微細加工応用に向けてー

電子工学専攻の 野田進 教授、井上卓也 同助教、森田遼平 同特定研究員らのグループは、数10ピコ秒以下という超短時間の間に、面内の共振波長分布が高速に自己変化可能なフォトニック結晶を考案し、それを利用することにより、短パルス(<30ピコ秒)かつ高ピーク出力(>80 W)レーザー発振を実現することに成功しました。本成果は、フォトニック結晶における新たな物理現象の発現という学術的な意義があるとともに、将来の超スマート社会を支える高精度光センシングやレーザー微細加工応用にとっても、極めて重要な成果と言えます。

来るべき超スマート社会 (Society 5.0)においては、自動運転等のスマートモビリティにおいて必須である高精度光センシングや、熱の影響を受けない超精密なレーザー加工を実現するため、数10ピコ秒以下の極めて短いパルス幅をもつ高ピーク出力光源が必要とされています。しかしながら、従来の半導体レーザーは、高出力化のため、光出射面積を増大すると、発振モードが多モード化してビーム品質が劣化するため、ピーク出力の限界がありました。研究グループは、上記の問題を解決するべく、高出力動作と高ビーム品質動作の両立が可能なフォトニック結晶レーザーに、可飽和吸収体(光の強度が強くなるとともに、光の吸収が減少する物質)を導入することで、これまでに、パルス幅数10ピコ秒未満でピーク出力20W級の短パルスレーザー発振の実証に成功しています。

今回、研究グループは、さらに高出力な短パルス発振を実現するための新たな工夫として、数10ピコ秒以下という僅かな時間の間に、面内の共振波長分布が高速に変化する自己変化可能なフォトニック結晶を考案しました。さらに、本フォトニック結晶を、フォトニック結晶レーザーの内部に導入することで、パルス幅30ピコ秒未満で、ピーク出力80W超(これまでの4倍以上に相当)の短パルス発振を実現しました。

本成果は、2023127日に、英国科学誌Nature Communicationsのオンライン版にて掲載されました。

研究詳細

高速自己変化可能なフォトニック結晶による高ピーク出力・短パルス光の発生ー超スマート社会を支える高精度光センシングやレーザー微細加工応用に向けてー

研究者情報

書誌情報

タイトル

Self-evolving photonic crystals for ultrafast photonics

(超高速フォトニクスのための自己変化フォトニック結晶)

著者

Takuya Inoue, Ryohei Morita, Kazuki Nigo, Masahiro Yoshida, Menaka De Zoysa, Kenji Ishizaki, Susumu Noda

掲載誌

Nature Communications

DOI 10.1038/s41467-022-35599-2
KURENAI http://hdl.handle.net/2433/278986

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