スピン偏極したトポロジカル超伝導状態を発見 ー誤り耐性のある量子計算実現への新たな研究手法を開拓ー

    電子工学専攻の大西康介 修士課程学生(研究当時)、大島諒 助教、白石誠司 教授らのグループは京都大学大学院理学研究科の松田裕司 教授、栁瀬陽一 教授と共同で、21世紀の新しい物質「トポロジカル量子物質」(その電子状態がトポロジカルに「捻れた」物質であり、20世紀までに発見されてきた半導体・金属・磁性体などとは根本的に異なる性質を持つ物質)の一種である「トポロジカル超伝導体」の候補物質を用いて、トポロジカル超伝導状態の証拠となり、かつ誤り耐性のある量子計算実現のキーとなる情報担体と期待されているマヨラナ準粒子の存在の間接的証拠でもあるスピン偏極状態を観測することに成功しました。

    超伝導は1911年にオランダ人のH.K. Onnesが発見して以来、基礎学術面でも応用面でも大きな関心を集め続けている現象です。近年の「トポロジカル量子物質」の勃興により、超伝導にもトポロジカルな状態が期待されること、そのトポロジカル超伝導の多くがスピン偏極状態を持ちうること、更にトポロジカル超伝導体中に「マヨラナ準粒子」と呼ばれる、誤り耐性のある量子計算を実現できる情報担体となりうる粒子が存在できることがわかってきました。今回の研究では、このトポロジカル超伝導体として期待されているFeTe0.6Se0.4(鉄テルルセレン)を用いて、この物質表面にトポロジカル超伝導体状態が確かに存在しスピン偏極状態が観測可能であることを実験的に示し、それを通じてマヨラナ準粒子が存在していることを間接的に明らかにしました。この成果はトポロジカル超伝導という21世紀の新しい固体物性の研究に新しい視点と実験手法を持ち込むだけでなく、誤り耐性のある量子計算の実現に向けて新しく、かつ強力な研究ツールを開拓したという意義があり、固体物理・量子技術の両面で極めて重要な一里塚への到達を意味します。

    本成果は202559日(現地時間)に米国学術誌であるPhysical Review B誌に速報性とインパクトの高い論文が選ばれるLetterとしてオンライン掲載されました。

    研究詳細

    スピン偏極したトポロジカル超伝導状態を発見 〜誤り耐性のある量子計算実現への新たな研究手法を開拓〜

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    タイトル

    “Potentiometric detection of spin polarization expected at the surface of FeTe0.6Se0.4 in the effective p-wave superconducting state”

    (有効p波超伝導状態にあるFeTeSe表面で期待されるスピン偏極の電気化学的計測)

    著者 K. Ohnishi, R. Ohshima, T. Nishijima, S. Kawabata, S. Kasahara, Y. Kasahara, Y. Ando, Y. Yanase, Y. Matsuda and M. Shiraishi
    掲載誌

    Physical Review B

    DOI 未定
    KURENAI

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