わたしの WINDING ROAD ~京大の研究者になる~ #05 研究者は一生青春できる!

みなさんこんにちは!
京大工学「わたしの WINDING ROAD ~京大の研究者になる~」インタビューチームです。

京大工学には、様々なターニングポイントを経て「京大の研究者になる」ことを選んだ、女性研究者が数多くいらっしゃいます。
工学に興味を持った学生生活から、現在の研究生活まで、これまでどんな道を歩まれてきたのでしょうか。
工学研究科の若手職員が直撃インタビューしてきました!

                              本インタビューは、先生との会話をもとに読みやすく編集しています。

工学系・研究者を目指したきっかけ

さて、今回お話を聞いた女性研究者は、化学理工学専攻(合成化学講座)の良永 裕佳子先生です。

良永先生は、文理選択をきっかけに、クリエイティブさに惹かれて工学系を志し、京都大学卒業後は一般企業の研究員を経て、現在は京大工学で有機合成の研究をされています。今回は、後輩である工学所属の女子学生からの質問にもお答えいただきました。良永先生へのインタビューから、研究の楽しさを覗いてみましょう!

――先生が工学系を目指した最初のきっかけはなんですか? 

「一番初めのきっかけは文理選択です。最初は、特に理系に親しみがあったわけではなくて、家族全員文系でしたし、なんとなくそのまま文系に行くのかなと思っていました。けれど、ちょっとした気の迷いというか、子供心に親への反抗心というか、違うことをやってみたいなと、理系を選んだのが最初のきっかけでした。」

 

――理系に進んでから、工学に進むことを決めたきっかけはありますか?

「工学に対しては、私は結構ポジティブなイメージを持っていました。というのは、幼少期から何か物を作るとか、絵を描くとか、ブロックを組み立てるとか、工作が好きだったので、工学が自分の好きなことにすごく自然につながるような気がして、工学系に進むことにしました。」

 

――幼少期から何かを作ることが好きだったんですね!工学の中で、どうして現在の研究分野に決めたのでしょうか?

「私の研究分野である有機化学には、高校2年生のとき、授業で出会ったんです。そのときになんとなく、新しいものをどんどん作っていくクリエイティブな感じだなというイメージを持ちました。元々私は、文章を書いたり、絵を描いたり、ものを作る職業に就きたいと思っていたので、有機化学のクリエイティブさに惹かれて、今に続いています。」


――高校生の頃、工学に進みたいという希望が固まったところで、なぜ京都大学に進学を希望されたのでしょうか? 

「一つは、もともと京都の高校に通っていて、高校にも近かったので常に目に入る存在だったというのが理由です。もう一つは、化学に興味を持った高校生のときに、京大の化学系はいいよとか、有名だよ、と周りの人から聞いたような気がします。ノーベル化学賞を受賞されている方が多くいらっしゃることでもすごく有名ですし、研究環境も整っていると聞いて、イメージが湧き、志望するようになりました。」

 

――民間企業に就職された後、研究者になられましたが、民間企業と比較して、研究者として大学で働くことの面白さや違いを感じたことがあればぜひお話をお伺いしたいです。

企業の研究はそのチームで研究を進めて、何か一つの製品につながる。それを通して確実に社会貢献や利益を得ることを目指して研究すると思うんですが、大学での研究って、サステナブルな材料や社会貢献ももちろん重視していますが、研究を始めるきっかけは、あ、これちょっと面白そうじゃない?とかでも構わないわけですよね。そこから思い描いた先に社会貢献がある。まずは、ぼやっとした興味関心でもいいというところが私にとってはすごく魅力だと感じます。そうしたちょっとした興味から芽を出すような研究がしやすいと個人的には思っていて、そのような自由度が魅力かな、と思っています。

研究と私生活はひと続き

――続いては、先生のお人柄を少し深掘りできるような質問に入らせていただきます。まずは、お仕事中の一日のスケジュールを教えていただけますでしょうか。

「結構フレキシブルな1日でして、朝9時に研究室がスタートということで、ちょっと早めに8時半ぐらいには出勤します。自分の実験をしたり、学生の実験を見たり、研究についてディスカッションをして、合間にご飯を食べていると夕方になっていますね。たまに研究に関する67人のグループミーティングを34時間やることがあったり、授業の代行や機器のメンテナンスなど細々した業務もあります。基本的には自分の実験と、学生さんとのディスカッションで、1日が過ぎています。」

 

――やることが多岐にわたるのと、決まったものがあるわけではない、という点からスケジュールを立てることが難しいように思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

「難しいかもしれないですね。この時間はシンポジウム、この時間はミーティング、という決まっている時間を差し引いた上で、自分の実験を組み立てて、その合間にディスカッションをする時間を入れていくというような調整をしています。」

 

――休日の気分転換もすごく大事かと思います。休日はどのように過ごされていますか。

「私はアウトドアな趣味が特にないので、家で過ごすことが多いです。なので、研究とひと続きというか、あまり切り替えてリフレッシュはしていないかもしれないです(笑)今日はもう仕事のことは考えずに出かける!みたいにリフレッシュする日ももちろんあるんですけど、毎週のことではないかもしれません。気づいたら、研究のことや、仕事もやってしまっています。でも家でゆったりとコーヒーを飲みながらやっているので、平日と全く一緒というわけではないかもしれません。あとは、気分転換の方法として、本を読むことが多いです。小説を日曜日の昼過ぎから夜ぐらいまでで一冊読んで、リフレッシュしています。」

 

――研究を進めていく中で、今までうまくいかなかったこともあったかと思います。行き詰まった時の気持ちの切り替えや、失敗したときの乗り越え方をお聞きしたいです。 

「実験計画を立てても立ててもうまくいかなくて、ちょっと焦ることもありますが、私は行き詰まった時は結構、向き合い続けるタイプで、切り替えてリフレッシュしよう!とかはしないタイプです。人によると思いますが、私の場合は、うまくいかないな、と落ち込む気持ちは焦りから来るものだと思います。その焦りがある中で、リフレッシュの時間を取ると、自分の中でさらに焦りに拍車がかかる気がして。なので、研究からは離れず、実験計画に関連した内容で、絶対にうまくいく合成や実験を挟んで、大丈夫だよね、しかも進んでるよねと、自分に言い聞かせながら、また進めていくみたいな切り替え方をしています。」

――うまくいかなかったら一歩下がりつつも、歩みを進めていく。自分との闘いみたいなところがあるんですね。 

「そうですね。なんというか、自分をコントロールしつつ、みたいなところがあるかもしれないです。」

 

京大工学所属の女子学生から良永先生に質問です!

 

今回のインタビューに際して、京都大学工学研究科修士課程の女子学生から、女性研究者かつ京大工学の先輩である良永先生に聞いてみたいことを募集してみました。

――まず、一つ目の質問です。研究者は業務外の時間であってもアイデアを思いついたり考えたりするため、公私の区切りをつけづらい職業であるというイメージがあります。良永先生はどのように時間の折り合いをつけたりプライベートを過ごしたりしているのでしょうか?

「実は私は区切りをあえてつけていないタイプでして。というのは、夫が同分野の研究者なので、家でも研究の話になったり、仕事の話になったりすることもありますし、その瞬間が楽しいこともあるんです。常に頭のどこかには研究のことがちらついているような状況が私は結構好きで。何か思いついたらすぐに何か書き残したり、すぐに始めたりできる環境もすごく好きなんです。」 

 

――常に研究のことが頭にある状態を楽しまれているのですね!そのような中で、もし研究に行き詰まったり、今はちょっと考えたくないな、と思うときにはどうされていますか?

「どうしてもキャパオーバーになってしまうときもあるんですけど、そうなったら自分の中で何か勝手にリミッターがかかる感覚といいますか、ちょっと今日の帰りは夜景を見ながらボーっと帰ろうとか、もう寝ようとか。そういう感じでリフレッシュしているかなと思います。」

 

――自然とリフレッシュされているんですね。次は別の女子学生からの質問です。現在修士課程で学んでいますが、男性と比較すると体力や体調などに不安を感じることがあります。女性研究者がまだまだ少ない中で、困ったことや悩んだことはありますか?

「確かに私も学生時代に、体力的にしんどいなと思いながら研究・実験をやっていたことがありました。その当時の私は、自分で抱え込みすぎていたというか、とにかくがむしゃらに頑張るスタイルだったんです。今になってみると、何かもう少しやり方を考えて、体調が悪いときに休んでも研究をちゃんと進めていけるようなシステムを作れるように考えたらよかったのかな、と思っています。」

 

――学生時代のお話をありがとうございます。休んでも研究を進めていけるような仕組みづくりが大切なのですね。最近はどうでしょうか?

「最近もやっぱりしんどいときとかはあるんですけど、できるだけ周りのためにも休むようにしています。仕事の進め方をがむしゃらタイプから、ちょっと変えると言いますか。具体的に言うと、昼間ずっと実験するスタイルだったのですが、昼間もちゃんとデスクワークをして考える時間を作るなどの工夫で、より進むようになったこともありました。」

 

――ご自身で対策しつつ、スタイルを変えていかれたということですね。
次は、女子学生の方からいただいた最後の質問です。この質問をくださった学生は、自分自身が研究をしていて困った経験はないそうですが、現在、社会的に女性の研究者を増やそうとする動きがある中で、女性研究者は増えていった方が良いのだろうかという素朴な疑問をもたれているようです。また、実際に女性研究者を増やしていくためには必要なことはなんだろうとも思われているようで、先生のお考えを伺えればと思います。

「増えるというよりは、自然な数、割合に落ち着けばいいなと思っています。今周りの研究者を見回して、やっぱり男女比で見ると91以上の比率になっていることもあります。その自然な数、割合というのは、その時代や社会の状況などによって、変動するものであり必ずしも、11ではないと思っているんですが、9対1というのは自然な割合というにはかなり極端なのではないかなと感じています。もう少し落ち着いた比になってくれたらいいのかな、と思っています。」

 

――その男女比の差が少しでも落ち着いていくことによって、女性研究者を目指そうと思う学生は増えていくと思いますか?

「はい、増えるのではないかなと思います。というのは、私が工学部の化学を志望したときも、化学系は他と比べると少し女性の比率が高いという話を聞いて、そのとき私はどこか少しホッとしたような気になっていました。高校生のときにその実感がやっぱりありますので、何か後押しになるような力になるんじゃないでしょうか。」

 

――女性研究者を今よりも増やすとしたら、どのような取り組みがあるといいな、と思いますか?

「そうですね。あまり具体的ではないのですが、将来の職業を志す上で、やっぱり幼少期をはじめとした大学生までの期間に得られるきっかけがすごく大事だと思っています。研究や実験ってなんか面白そうとか、化学いいな、物理いいなと魅力を感じてもらえるきっかけがあるといいですね。逆に、研究に対するネガティブなイメージを持たないとか、もそうですね。そういった機会をできるだけ男女の偏りなくというか、もしかすると地域の偏りもなく、いろいろな人に届けられるようにできたらいいですね。」

 

京大工学を目指す女子学生へメッセージ

――ありがとうございます。それでは、研究者として、これからの目標や、将来の夢があれば、教えていただきたいです。 

「私は有機化学者なので、原子がつながった有機分子を作ってるんですけど、自分だけの分子の領域みたいなのを作りたいな、と思っています。冒頭でちょっとだけお話しましたけど、新しい分子って実はすぐできるんですよ。ちょっと変化させたらすぐ自分の分子になるっていうところがすごく創造性がありますよね。できたら私は特に面白い分子を作りたくて。ただ、面白い分子領域を作ると言っても簡単ではなくて、分子としての面白さもありつつ、その分子が実際に合成できる、作れるというところが重要で、その2つが両立できたら、本当に究極の自分だけの分子ができると思っています。ある分子を見つければ、その研究者の顔が浮かぶじゃないですけど、名刺代わりの分子みたいな、何かそういったものができたらいいな、と思っています。」

――名刺代わりの自分が生み出した分子、想像しただけでかっこいいですね!そうした研究を社会にこういうふうに役立てたい、生み出した分子がこうなってほしいなど思い描いていることががあれば教えていただきたいです。 

「社会に役立てるということは、実用性や世に出す時間も含めて結構難しいんです。まだ基礎的な興味ベースで研究を進めているところではあるんですけども、ちょっと今考えていることはあります。現在研究しているポリマー、高分子と呼ばれていてポリエチレンなど材料としてよく知られているものがあります。先ほど新しい分子を作りたいと言いましたが、実は新しい高分子も作りたくて。新しく生み出したポリマーを通して、よりサステナブルな材料みたいなものが実現できたらいいな、なんて考えています。」

 

――良永先生のオリジナル分子・高分子を完成させることを楽しみにしています!
では最後に、京都大学工学部・工学研究科の後輩である女子学生へのメッセージをお願いします!

 「学生のうちにできれば、自分がのめり込めることを見つけてほしいなと思います。自分がのめり込めるほど好きなことが一つでも見つかれば、自分のタイプやどういうことを楽しいと思うかとか、自分の癖とかが分かってくることで、そこから先、どうやって生きていったら楽しいのかみたいなものも分かっていくような気がするんです。私はやっぱりその中でも一つ、研究をお勧めしたくて。研究は、やっているとうまくいかないことが多いんですが、「次はこうしたら上手くいくんじゃないか」と思いついて試すことの繰り返しです。その自分が思いついたアイディアが良いはずと信じて試したくてたまらなくなる、その真っ直ぐな感じが青春だなというか、すごく楽しいんですよね。時間を忘れて楽しめるというところは本当におすすめです。学部生の方も研究室に入られたら、そこでの研究を一度頑張ってやってみて、その中で面白いことないかな、っていうのを探してみてほしいと思います。」

 

研究と私生活がひと続きである環境だからこそ研究につながることもある。そのぐらい研究がお好きな先生だからこそ、研究に対するまっすぐなお気持ちと、自分がのめり込めることを見つけることの大切さを教えていただきました。

良永先生、ありがとうございました!

(2026年7月取材)

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