血液適合性高分子表面の「中間水」の直接観察に成功 ―生体適合性材料の設計に向けた新たなナノスケール評価手法―

医療機器や人工臓器において、材料表面の血液適合性(抗血栓性)は極めて重要です。
優れた血液適合性を持つポリ(2-メトキシエチルアクリレート)(PMEA)は、その表面に「中間水」と呼ばれる運動性の高い水和層を形成し、これがタンパク質吸着を抑制するバリアとして機能するという仮説が立てられていました。

京都大学大学院工学研究科とテルモ株式会社は、共同研究により、液中周波数変調原子間力顕微鏡(FM-AFM)を用いて「中間水」の直接観察に成功しました。
研究は、京都大学大学院工学研究科電気電子デジタル理工学専攻の小林 圭 准教授、Yilin Wang 博士後期課程学生らおよびテルモ株式会社コーポレートR&Dコーティングチームによって実施されました。
一方、血液適合性が低いポリ(n-ブチルメタクリレート)(PBMA)表面では、疎水性特有の水和構造が観察されました。
また、ナノ力学測定の結果、PMEA表面は水が浸透していて柔らかいのに対し、PBMA表面は比較的硬く、タンパク質吸着の足場となり得ることが分かりました。
今後、本手法によるナノスケール計測とシミュレーション等の計算データをAIに学習させることで、血液適合性を高精度に予測・逆設計するデータ駆動型開発への発展が期待されます。

本研究成果は、2026年8月24日に、アメリカ化学会(American Chemical Society)出版の「Nano Letters」誌にオンライン掲載されました。

研究詳細

血液適合性高分子表面の「中間水」の直接観察に成功 ―生体適合性材料の設計に向けた新たなナノスケール評価手法―

研究者情報

論文情報

タイトル

Direct Visualization of Contrasting Hydration Structures on Poly(2-methoxyethyl acrylate) and Poly(n-butyl methacrylate) by Frequency Modulation Atomic Force Microscopy
周波数変調原子間力顕微鏡によるポリ(2-メトキシエチルアクリレート)およびポリ(n-ブチルメタクリレート)上における対照的な水和構造の直接可視化

著者

Yilin Wang、築島 琢磨、平木 聰亘、Yihua Liu、安齊 崇王、阿部 吉彦、山田 啓文、小林 圭

掲載誌

Nano Letters 

DOI

10.1021/acs.nanolett.6c02664

KURENAI

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電気電子デジタル理工学専攻