超伝導ダイオード効果の新しい背景学理を発見 〜超省電力な情報回路の実現に大きく前進〜
電子工学専攻の永田歌寧 修士課程学生、白石誠司 教授らのグループは理学研究科の栁瀬陽一 教授、松田祐司 教授らと共同で、超低消費な情報回路の構築のために強力な武器となる超伝導体が示すダイオード(整流)効果に関する新しい背景学理を発見しました。
超伝導ダイオード効果は2020年に京都大学の研究グループによって発見された新しい効果であり、超伝導体に電流を流す際に、電流を流す方向によって抵抗がゼロの超伝導状態になったり抵抗が有限の常伝導状態になったりする効果を言います。つまり、onとoffの2値状態をゼロ抵抗である超伝導体1つで実現できるため、将来的にこの効果を活かした超省電力な情報回路の実現に期待が集まっています。従来、この効果を発現させるためには、超伝導体の構造的な空間反転対称性が破れていることと外部磁場の印加の双方が必要であるとされてきました。今回、白石教授らはFeSe(セレン化鉄)という超伝導体を用いて超伝導ダイオード効果の研究を行う中で、物質の持つ熱電効果とそれに伴う素子内部の熱勾配が超伝導ダイオード効果をもたらすことを発見し、従来この効果の発現に必要とされてきた明示的な空間反転対称性の破れも外部磁場も不要であることを明らかにしました。この成果は、現在大きな関心を集めているこの超伝導ダイオード効果という現象の物理的理解を大きく進めるだけでなく、外部磁場が不要でコンパクトかつ超低消費な情報素子および回路の実現に大きく前進した点で極めて重要な成果です。
本成果は2025年6月12日(現地時間)に、米国学術誌「Physical Review Letters」誌にオンライン掲載されました。
研究詳細
超伝導ダイオード効果の新しい背景学理を発見 〜超省電力な情報回路の実現に大きく前進〜
研究者情報
- 白石 誠司 京都大学教育研究活動データベース
書誌情報
タイトル |
“Field-free superconducting diode effect in layered superconductor FeSe” (層状超伝導体FeSeにおける外場の必要ない超伝導ダイオード効果) |
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著者 |
U. Nagata1, M. Aoki1,2,%, A. Daido3, S. Kasahara4, Y. Kasahara3,#, R. Ohshima1,2, Y. Ando1,2,$, Y. Yanase3, Y. Matsuda3 and M. Shiraishi 1,2 |
掲載誌 |
Physical Review Letters |
DOI | 10.1103/PhysRevLett.134.236703 |
KURENAI | ー |