ビニルポリマーの立体構造を制御する新戦略 ―弱い相互作用で側鎖の方向を思い通りに―
化学理工学専攻の西川剛 助教、鈴木宏史 博士後期課程学生(研究当時)、大内誠 教授の研究グループは「非古典的水素結合」と呼ばれる弱い相互作用が鍵となってビニルポリマーの立体規則性(側鎖の方向)が制御される現象を見出しました。立体規則性はプラスチックをはじめとする高分子材料の結晶性や材料の硬さや強靭さといった力学特性に影響を与えることが知られており、さらに安定性や分解性にも影響する可能性があります。しかし、立体規則性を制御する手法はいまだ限られています。本研究では、高分子材料(ポリマー)の原料となる分子(モノマー)として独自に研究を進めてきたホウ素が二重結合部分に直結した分子に対し、ホウ素上の保護基の適切な位置に酸素原子を導入した分子を設計しました。その結果、重合に関与する二重結合部分の炭素-水素結合と酸素原子の間に働く「非古典的水素結合」という弱い相互作用が重合中のモノマー分子の配座に影響を与えることが明らかとなりました。これにより、側鎖が互い違いに反対方向を向いたシンジオタクチックと呼ばれる立体規則性を有するポリマーが生成することを見出しました。一方で、酸素原子を含まないモノマーからは、側鎖が同じ方向を向いたイソタクチックポリマーが生成し、酸素原子の有無によって全く異なる立体規則性のポリマーを作り分けられることが分かりました。さらに、得られたポリマーはシンジオタクチックの立体規則性を保持したままポリビニルアルコール(PVA)へと変換でき、制御された立体規則性に基づく特異的な結晶化挙動を示しました。本成果は今後、様々なポリマーの立体規則性を制御する新たな手法の開発につながるとともに、ポリマーの物性や機能を目的に応じて設計する材料開発へと発展することが期待されます。
本成果は2026年6月1日午前10時(ロンドン時間)に、国際学術誌「Nature Communications」のオンライン版に掲載されます。
研究詳細
ビニルポリマーの立体構造を制御する新戦略 ―弱い相互作用で側鎖の方向を思い通りに―
研究者情報
- 西川 剛 京都大学教育研究活動データベース
- 大内 誠 京都大学教育研究活動データベース
論文情報
| タイトル |
The Key Role of an Intramolecular Non-classical Hydrogen Bond of Vinylboron Monomer for Stereoselective Polymerization(ビニルホウ素モノマーの立体規則性制御重合における分子内の非古典的水素結合の役割) |
|---|---|
| 著者 |
鈴木宏史、西川剛、大内誠 |
| 掲載誌 |
Nature Communications |
| DOI | 10.1038/s41467-026-73603-1 |
| KURENAI | http://hdl.handle.net/2433/301118 |
