複数分子からなる人工的な環状積層構造において電荷やエネルギーが周回する特異な現象を証明

    自然界では、光合成を行う植物中において色素分子が環状に並んだ集合体をアンテナとして、光エネルギーを効率的に集めて利用しています。このような環状に並んだユニットの間を電荷やエネルギーが周回する現象はトロイダル共役と呼ばれ、これまで人工的な物質では1つの分子内の現象としてのみ知られていました。

    大阪公立大学大学院理学研究科の酒巻 大輔准教授、藤原 秀紀教授、工学研究科の松井 康哲准教授、池田 浩教授、新潟大学共用設備基盤センターの古川 貢准教授、合成・生物化学専攻の清水 大貴助教らの研究グループは、平面構造を持つ人工色素分子であるフタロシアニンの周りに、電子を受け渡しやすいユニット(電子ドナー)が8枚、柱のように結合した分子を開発しました。そして、この分子2つは自発的に合体し、16枚の電子ドナーが環状に並んでいることをX線結晶構造解析により解明しました。また、電子ドナー同士は、電子やエネルギーのやりとりが可能なほど近い距離に位置し、光や電荷を与えることによりプラスの電荷がこの輪の中を周回していることがわかりました。これにより、人工的に合成された複数分子の環状積層構造においてトロイダル共役が起きたことを世界で初めて示しました。

    本研究成果は、2025年3月25日に国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」にオンライン公開されました。

    研究詳細

    複数分子からなる人工的な環状積層構造において 電荷やエネルギーが周回する特異な現象を証明

    研究者情報

    書誌情報

    タイトル

    Intermolecular Toroidal Conjugation: Circularly Stacked 16 π-Planes Formed by Supramolecular Assembly Enabling Cyclic Charge and Energy Delocalization

    著者

    Daisuke Sakamaki, Koki Tsubono, Minami Nakamura, Daiki Shimizu, Yasunori Matsui, Hiroshi Ikeda, Ko Furukawa, Hideki Fujiwara

    掲載誌

    Angewandte Chemie International Edition

    DOI 10.1002/anie.202504353
    KURENAI

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    合成・生物化学専攻

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