わたしの WINDING ROAD ~京大の研究者になる~ #06「水」から広がる世界に迫る!
みなさんこんにちは!
京大工学「わたしの WINDING ROAD ~京大の研究者になる~」インタビューチームです。
京大工学には、様々なターニングポイントを経て「京大の研究者になる」ことを選んだ、女性研究者が数多くいます。
工学に興味を持った学生生活から、現在の研究生活まで、これまでどんな道を歩んできたのでしょうか。
工学研究科の若手職員が直撃インタビューしてきました!
本インタビューは、先生との会話をもとに読みやすく編集しています。
自然環境への想いから工学の道へ
さて、本日ご紹介する女性研究者は、都市環境工学専攻の竹内 悠先生。
水の分野でご活躍される竹内先生は、普段、滋賀県の流域圏総合環境質研究センターで勤務されています。現在は、膜処理などの技術を用いて排水を安全かつ効率的に再生し、国内外の水不足や災害時の断水にも対応できる持続可能な水循環をつくる研究に取り組まれています。
今回は、竹内先生が工学を志したきっかけから普段の研究生活までじっくりお話を伺うことができました。

――竹内先生が工学系を目指すきっかけは何でしたか?
「もともと理系の分野は好きだという思いはありました。中学生の頃はロボット工学にも関心があったのですが、大学の研究室訪問をする機会があって、実際の雰囲気をみてちょっと違うかも、と思うようになりました。
そこから何をしようか考えていた時に、高校生の時に家族でイギリスのスコットランドへ旅行に行く機会があり、その自然の風景がものすごく綺麗で、感動しました。当時から気候変動も社会で議論されていて、地球にある美しい自然を、技術を使ってずっと残していきたい、環境のことに携わる勉強をしたいという思いを抱くようになりました。」
――ご自身のスコットランドでの体験を経て、高校生の頃から自然環境に関わる学問に興味をもたれるようになり、工学系に進まれたということですね。
その中でも特に、京都大学に進学したいと思われたきっかけや、京都大学で良かったなというご経験があれば教えていただきたいです。
「そうですね。私はもともと大阪の出身なのですが、京都の穏やかな雰囲気が好きで、京都の大学に行きたいなと思っていました。その中でも特に、京都大学工学部地球工学科に惹かれました。パンフレットを見ただけでもすごく興味が湧きましたね。
あとは、高校生の頃に仲の良かった友達がみんな京大を目指していて、じゃあ一緒に頑張ろう、ということで京都大学に決めました。京都大学は身近な存在で、実際に入学してからも鴨川のような京都らしい雰囲気の中で勉強できたこともよかったです。」
――ありがとうございます。竹内先生は地球工学科に進まれてからも、環境の分野に興味をもたれ、大学院では都市環境工学専攻に進学されたんですね。具体的な研究分野を決めたきっかけがあれば伺いたいです。
「地球工学科に入学して、1、2回生は土木、資源、環境という3つの分野について学びます。土木の授業ではダムや橋の設計についても学ぶのですが、やはり自分は環境のことを勉強したいと思っていました。
そんななかで、ちょうど2回生の頃に水資源工学という授業を受けて、立川 康人先生(社会基盤工学専攻)が授業をされていました。
この授業では水資源を都市で利用するためにはどんな資源があるか、ということをテーマにしていました。例えば、地下水や河川水がありますが、その中の一つに下水を再利用するという施策がありました。当時の自分は「なんだそれ」と思って。
日本には水資源がたくさんある中で、どうして水をリサイクルするんだろうと何か引っかかりを感じました。調べてみると、世界ではそういった水資源が不足している地域がまだまだ多くあり、水にかかわる環境問題も深刻化していることが分かって、そうした地域で水をリサイクルすることができれば、その都市の人たちはもっと豊かに暮らせるのではないかと考えるようになりました。
あとは海水を真水にするという方法もあるのですが、その海水をろ過して真水を作る技術で使われるフィルターを作っているのが日本のメーカーで、世界の水問題を解決していることを知りました。日本の技術が世界の人たちの課題を解決するというところにすごく惹かれて、水の世界に入っていきました。」

実際に、竹内先生に研究室の様子を見学させていただきました
「水」をキーワードに研究者の世界へ
――「水」にかかわる研究分野を選ばれたということでしたが、数ある職業のなかで、特に「研究者」を選ばれたのはなぜだったのでしょうか。他に迷われた進路や、京都大学で学び続けられた理由はありますか。
「そうですね、振り返ってみると、水を再利用することには、学部の頃から興味を持ちました。工学部の学生は4回生のときに研究室へ配属されるのですが、その際に田中 宏明先生(現 京都大学名誉教授)がちょうど沖縄の水不足の地域を対象としたプロジェクトを実施されていて、沖縄で下水処理場の水を高度処理して農業用水に活用するという活動に参加していました。プロジェクトの期間は5年間でしたが、私が学部生の時から修士2年までちょうど5年間関わらせていただきました。
実験室の中で実験をするだけではなく、実際に沖縄へ月1ぐらいの頻度で行き、現地の下水処理場のプラントに大型の実験装置で実験をさせていただく機会を得ることができました。また、産官学連携プロジェクトだったこともあり、現地のコンサルタントの方や東レといったメーカーの方、大学に限らない分野の方たちと関わる機会があって、それがすごく面白いなと思って。修士課程という限られた時間でしたが、自分の世界が少し広がったような経験をさせていただいたと思っています。
進路としては、私自身は修士課程を修了したら就職するものだと最初は思っていましたね。修士課程1年目の頃に少しずつ就活をはじめたのですが、やっぱり「水の再利用」という、「自分の好きなことを探求したい」という気持ちが大きくなってきました。就活で企業の面接を受ける中で、会社でどんな仕事でもやりますか?という質問があり、私自身の性格もあると思うのですが、やはり自分のやりたいことを頑張りたい、という気持ちになって…。そこから博士後期課程への進学を考え始めました。
周りには高校生の頃からとか、修士課程に入る頃には博士後期課程に行くと決めていたような人もいたのですが、私は博士後期課程の入試1ヶ月前ぐらいに進学を決めました。まさに滑り込みのような感じです。」

――そうだったのですね!進学にあたって、竹内先生にも、迷いや不安があったのですね。
「修士課程で所属していた研究室には博士後期課程の先輩もいて、そういう人たちの姿を見る中で自分も進学してこんな風に研究に没頭できるのかな、と。研究が大好きで、もう土日もずっと研究室にいるという人もいらしたので…。ただ、先輩方に自分も博士後期課程への進学を考えてるんですけど、私向いてますかね、と相談をした時に、「ゼミの発表とか聞いてても、一つのことを深く考えたりしてると思うし、研究者は向いてると思うよ」と言葉をかけていただきました。
あとは、両親にも就職ではなく進学になるので相談しました。最初は父も私は修士課程を修了したら就職するんだろう、と思っていたようなので驚かれました。ただ、私の父自身も学生時代に博士後期課程に行こうか迷っていたけれど、就職のために進学の道を諦めたということがあったそうです。父と同様に私も就職しようという思いでいたけれど、やっぱり進学したいと話したところ、父も考えてくれたみたいで。「研究が好きなら進学してみたら、挑戦してみたら。」という風に言ってくれました。父だけでなく母も応援してくれて、自分としても「やってみよう」と思えたので、周りに相談してすごく背中を押してもらったというところはあります。」
――修士課程の学生だと、 修士課程1年目の頃から就活を始める方は多いかと思うんですが、その中で竹内先生は研究者の道を見出されたということですね。
例えば課程が変わる際に、別の大学に進学される方もいらっしゃると思うのですが、博士後期課程でも京都大学で学ぶことは、竹内先生にとっては自然な流れだったのでしょうか。
「そうですね、やりたいことができる環境で、先生もすごく面白い先生だったので、そのまま進学しました。
ただ博士後期課程の間に、留学はしたいと思っていました。そこで工学研究科の「馬詰研究奨励賞」に採択いただくことができて、二年目の終わりから三年目にかけて5ヶ月間、オーストラリアで研究留学をさせていただきました。
初めて海外ラボの環境を知ることができたり、同じオーストラリアの大学で他大学の博士後期課程で同学年の女子学生とすごく仲良くなったりして…。その子とは、今でもつながりがあります。」
――工学研究科では今でも「馬詰研究奨励賞」を実施していますが、竹内先生にとって「馬詰研究奨励賞」での研究留学はとても貴重な経験になったのですね。
それでは、竹内先生にとって職業としての研究者の魅力とは何でしょうか。
「やっぱり一番は自分のやりたいこと、自分が探求したいことを自由にできる点が、研究者ならではだなとは思いますし、一番研究者をやってて楽しいところですかね。
あとは、学際研究とも言われますが、自分の専門分野だけではなく、工学の中でも別の研究分野の研究者と共同研究を促進する「次世代学際院」の取り組みにも関わらせていただいています。いろんな分野の先生と話をする機会だったり、工学の中だけではなくて、化学系の研究者や社会科学の研究者など、いろんな分野の方と話をするのが好きで。「この人にちょっと会いに行ってみよう」と自分でアポを取って、学内外問わずいろんな方に話を聞きに行きます。自分が思う「やってみたいな」をすぐ実行に移せるというのは、研究者のいいところかなと思います。」
――大学の枠組みを超えた学際的な交流をされていて、とても素敵だと感じました。
研究者としてのワーク&ライフ
――続いては、先生のお人柄を少し深掘りできるような質問に入らせていただきます。研究者の方はどのような働き方をされているのか、気になる学生もいるかと思います。先生の普段の1日のスケジュールを教えていただけますか。
「本当に人それぞれだと思います。フレックスなので、朝から晩まで研究室にいるという先生もいらっしゃいますね。私の場合は、大体朝9時ぐらいに来て夕方6時ぐらいに帰るような感じです。その間に研究したり、打ち合わせをしたり、研究室の運営に関わることや授業のことなど、いくつか仕事をしています。もうちょっと家でやりたいなという時は、家でデスクワークをすることもあります。」
――土日などの休日はどうでしょうか。
「土日はそのときによりますね。申請書を書かないといけないとか、学会発表の準備がまだ終わっていないときなどは、土曜日の半分ぐらいを使って仕事をすることもあります。忙しいときは土日ずっと仕事をしていることもあり、結構忙しさの波があります。忙しくないときは土日の両方休みということもよくありますよ。」
――では、先生にとっての息抜きの方法は何かありますか。
「カフェに行ったり散歩したりとか、お寺に行ったり、美術館に行ったり、ボーっとすることが好きですね。あとは美味しいものを食べることも好きなので、レストランに行ってワインを飲んだりも結構しています。」

――素敵な休日の過ごし方ですね。平日だと、流域圏は琵琶湖にも近くて、周りを散策するのも息抜きになりそうですね。
「はい。午後の3時や4時など、ちょっと疲れた時は、琵琶湖を眺めてゆっくり散策して研究室に戻ってくることもたまにあります。」
――研究を進めていく中で、スケジュール通りにいかない時や行き詰まる時もあると思いますが、そんな時はどのように乗り越えていますか。
「まあ、基本うまくいかないので、そういうものだなと思うところはありつつ、次こうしてみたらいいんじゃないか、と考えるのも楽しいといえば楽しいです。それがどれもうまくいかないと、しんどくはなりますが…。でも、そういったことは研究者に限った話でもないと思うので。
行き詰まった時は、本を読んだりしています。別の人の人生を見てみる、みたいな感じですね。大学の頃から本を読む機会が増えて、例えば安藤忠雄さんの『連戦連敗』を読んで、世界的に有名な建築家の安藤さんでさえ失敗ばかりで、そういうものなんだと勇気づけられます。あとは、スプツニ子!さんというメディアアーティストの方の『はみだす力』という本ですね。一つの考え方に囚われなくてもいいよね、自分の好きなことをやってみようという内容で、その本から元気をもらったりしています。
あとは、ワインが好きなのでワインを飲んでもう忘れる、みたいな。」
――読書を通じて、別の人の人生を見てみることで、切り替えるきっかけやパワーをもらう、素敵な乗り越え方ですね。
京大工学所属の女子学生から竹内先生へ質問です!
――今回のインタビューに際して、京都大学工学研究科修士課程の女子学生から、竹内先生へ女性研究者かつ京大工学の先輩ならではの質問として聞いてみたいことを募集してみました。まず1つ目の質問です。研究者は業務外の時間であってもアイデアを思いついたり考えたりするため、公私の区切りをつけづらい職業であるというイメージがあります。竹内先生が時間の折り合いのつけ方や、プライベートを過ごされるうえで工夫されていることがあればぜひ伺いたいです。
「確かに公私の区切りのつけづらさはありますが、研究者は自分で仕事の進め方や時間を調整しやすい職業だと思います。ちょっと午前中家事をしてから仕事に来よう、とか、もう今日は早めに帰ってゆっくりして明日頑張ろう、といったこともあります。
男女を問わず、お子さんがいる方にとっても研究者は時間がフレックスで働きやすくもあり、そこはすごくいいなと思っていますね。
土日においては、私の場合、やりたいからやっているというところもあります。次の申請書を書くためのアイデアを考えることは、やりたい研究をやるためにやらないといけないことではあるので、そこは"これ頑張ったらやりたいことをやれる"と。土日も仕事に追われてしんどいというよりは、自分がやりたいことでもあるからやっている、という感じです。
ただもちろん、月曜日から金曜日まで頑張って、土日はもう休みという働き方もできるので、そこは自分で好きなように折り合いをつけられるのは良いところです。私自身もあまり体力がある方ではないと思っているので、今日は休みにしよう、とする日もありますし。やらない時はもうやらない、ですね。
そこは自分の気持ちの持ちかた次第であり、自分で決められるかどうかだと思います。あとは自分を知っておくっていうことが大事ですね。」
――研究者ならではの働き方の良さがあり、自分のことをよく知って時間を管理することが大切なのですね。
次の質問です。現在修士課程で学んでいますが、男性と比較すると体力や体調などに不安を感じることがあります。女性研究者がまだまだ少ない中で、困ったことや悩んだことはありますか?
「どちらかというと、私も体力は少ない方ですね。レーダーチャートに書いたら、多分、"体力1"になるんじゃないのかな。ただその分、集中力や行動力はあるとは思うので、そこで補っているというか。頑張れる時にバッと頑張って、もう疲れたらやめることもあります。行動力としては、いろんな人に会って、新しいアイデアを自分で作りだすことを頑張っていて、自分の得意なところ、苦手なところを見つけながら、試行錯誤しています。
体調や気分にはどうしても波があるので、調子が上がらないときは無理をせず、頑張れるときに集中して取り組むようにしています。"あまり深く考えすぎず"、"そういうこともある"ぐらいの感じでいる方が楽かなとは思います。
自分の状態を知りながら、自分に合った方法を見つけていくのがいいのではないでしょうか。」
――自分の得手不得手をよく知って、自分自身で調整していくことも重要なのですね。
では、 学生からいただいた最後の質問です。この質問をくださった学生は、自分自身が研究をしていて困った経験はないそうですが、社会的に女性研究者を増やしていこうという動きがある中で、女性研究者は増えていった方が良いのだろうかという素朴な疑問をもたれているようです。また、実際に女性研究者を増やしていくためには必要なことはなんだろうとも思われているようで、先生のお考えを伺えればと思います。
「そうですね、増えていった方が良いかどうかというと、私としては増えてくれると嬉しいですね。やっぱり工学系は男性が多いですし、少し年上の女性研究者の方が身近にいると、"将来こうなりたい"といったイメージをもちやすいと思います。
国や大学によって制度は異なりますが、博士後期課程は日本ではまだまだ学費を納めて進学するスタイルが一般的なところ、海外では博士課程の学生が研究プロジェクトなどから給与を受けながら研究するケースが多くあります。日本では学費や生活費への不安が、博士後期課程への進学をためらう一つの要因になっていると思います。」
――博士後期課程に男女ともに進学しやすい環境を作ることで、研究者の道を選べる女子学生も増えるかもしれませんね。
京大工学を目指す女子学生へメッセージ
――先生の研究者として今後の夢やビジョンがありましたら、ぜひ教えていただけますか。
「水再生利用を軸に、工学だけでなく、社会科学やビジネスなど異なる分野の方々とも連携しながら、地域に合った持続可能な水循環の仕組みをつくっていきたいと考えています。他の分野の研究者たちと話をしたり、共同して新しい研究テーマを作っていくのはすごく好きなので、それを自身の専門である水分野にうまく絡ませつつ、いろんな分野の方とつながりながら、新しい価値を生み出せたらいいなと思います。」
――最後に、京都大学工学部・工学研究科の後輩である女子学生へのメッセージをお願いします。
「私自身、博士後期課程で自分の世界が広がったという感じがありました。修士課程まではみんなと同じようなスケジュールで研究をこなす部分がありましたが、博士後期課程は本当に自由だと思います。海外で学会発表した時は、海外の人がみんなこちらを向いて私の発表を聞いてくれていて「すごい!」と感じました。
ほかにも、大学内だけではなく研究機関や他の大学の研究者との新しいつながりが生まれたり、自分が動いた分だけ世界が広がった感覚がありました。そのつながりは博士後期課程が終わった後も続いています。
博士後期課程に進む人は少ないですし、難しいという思いもあるかもしれませんが、やはり新しい世界が広がるのは間違いないので、そこは一歩踏み出してみてほしいなと思います。
あとは、そうですね、博士後期課程出身者の活躍できる場は大学や研究所などもありますが、最近はビジネスの分野やスタートアップを立ち上げた人もちらほら出てきていて、活躍の場が多方面に広がってきているのを実感しています。自分のやりたいことに向けて歩みを進めてほしいなと思います。」

「水」をキーワードに工学以外の分野ともつながりを目指す竹内先生。「自分が動けば世界が広がる」という言葉をまさしく体現されていました。ありがとうございました!
(2026年7月取材)
研究者情報
- 竹内 悠 京都大学教育研究活動データベース
