わたしの WINDING ROAD ~京大の研究者になる~ #03 ミトコンドリアに宇宙? 好奇心から一直線!

みなさんこんにちは!
京大工学「わたしの WINDING ROAD ~京大の研究者になる~」編集部、インタビュアーTです。

京大工学には、様々なターニングポイントを経て「京大の研究者になる」ことを選んだ、女性研究者が数多くいます。
工学に興味を持った学生生活から、現在の研究生活まで、これまでどんな道を歩んできたのでしょうか。
工学研究科の若手職員が直撃インタビューしてきました!

本インタビューは、先生との会話をもとに読みやすく編集しています。

小さい頃から理系ひとすじ!

インタビュアーTがお話を聞いた女性研究者は、物質エネルギー化学専攻の三浦理紗子先生。

三浦先生は、工学の立場から医療へアプローチする研究を行っています。「工学部」と「医療系」、まったく違う分野のように見えますが、実は工学は様々な分野と強力なタッグを組むことができる分野なのです!三浦先生へのインタビューから、工学の懐の深さを覗いてみましょう!

三浦先生①

 取材中も終始笑顔で、インタビュアーからの質問に答えてくれた三浦先生

 

――小さい頃から工学への興味があったのですか

「小さい頃は医療分野に興味がありました。勉強でも文系科目より理系科目の方が得意だったので、自分は理系だという認識はありましたね。」

 

――理系の中でも化学の分野に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

「子どもの頃、父親が『ミトコンドリアの中には宇宙と同じような構造があるんだ』と何度か言っていたのを覚えています

 

――ミトコンドリアの中に宇宙!?急にすごくロマンのあるお話ですね。

「ミトコンドリアという小さな細胞小器官の中に、宇宙のようによくわからない構造があるという意味だったと思うのですが、そもそも生物とは何か?ということ、ひいては生物が生きているということについて、父親の言葉から考えを巡らせました。そして、宇宙のようによくわからない構造のミトコンドリア、タンパク質、細胞も、どんどん細かく見ていくと、結局は化学(物質・反応)の集まりだということに気が付くんです。薬を飲んで風邪が治るという働きにも現れるように、『生きている』ということと『化学反応が全て』ということが並び立っていることに、面白い!と感じるようになりました

 

――生きることと化学反応を結び付け、さらに「面白い!」と感じていた三浦先生、幼少期からのツワモノ感が漂うエピソードですね…。大学進学で工学部を選択したきっかけは何ですか?

「高校の時、化学系から医療分野へのアプローチがあると気づき、しばらくは医学と化学どちらの道に進むかで迷っていました。最終的には、医療的な用途に使える材料の開発ができたら面白いんじゃないかと思って、工学部への進学を決めました。研究環境が整っていて楽しいだろうと考えたこと、また父親が京大出身だったことから、京都大学をめざすことにしました

 

――高校卒業後、京都大学工学部工業化学科へ進まれますが、一般的にイメージされやすい通り、女子学生の数は少なかったのでしょうか?

「むしろ高校時代の方が理系選択の女子が少なくて、女子が自分一人になる授業があったりしました。学部時代は、女子が自分一人だけになる講義はほぼなかったと思います。今の学生は、当時と比べて女子の割合は同じぐらいか、若干増えているぐらいだと思います。特に生体系を扱う研究室は女子人気が高くて、そういった研究室だと体感では男女半々ぐらいに感じることもありますね。」

「研究」は自分に合っている!興味を持ったら一直線

――先生はその後、博士課程に進学し、研究者としての道を歩むことになります。博士課程進学の際に迷ったり悩んだりされたのでしょうか

「博士進学を考える際によくある悩みとしては、経済面・就職面が挙げられると思うんです。私も経済面は少し心配だったので、色々情報を調べて、リーディング大学院プログラム注1の存在を知りました。そのプログラムに修士1回生の時に採択され、奨学金をもらえたので、経済面での心配がなかったのは有難かったです。また、企業への就職にも特にこだわりがなかったので、博士課程に進学することへの迷いもありませんでした。」
注1:優秀な学生を、俯瞰力と独創力を備え広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーへ導くためのプログラム。https://www.t.kyoto-u.ac.jp/ja/education/programs/hakase

三浦先生② 

リーディング大学院プログラムで、シカゴ大学に 3 か月間留学した三浦先生。留学中は研究の合間にシカゴカブスの観戦に行ったりと、生活も満喫したそう。

 

――自分の不安を取り除くために積極的に情報を集めていったんですね。研究者になることを決めたとき、周りの反応はどうでしたか?

「研究者になると決めた時は、教授から歓迎してもらったし、父親も理系出身なので理解を示してくれたました。母親は理系出身ではないので、研究者という職業自体にピンと来ていない感じでしたが、それでもすんなり承諾してくれました。母は今も、私がどういう仕事をしているのか、よくわかっていないと思いますが(笑)。」

――三浦先生のお母さん!娘さんは素晴らしい研究者として活躍していますよ!!(伝われ…!)

 

――研究者になること以外に迷った進路はありましたか?

「博士課程修了後の進路について、大学教員になることをほぼ決めていたのですが、製薬企業の研究職と若干迷っていた時期もありました。数個の製薬企業の面接を受けたのですが、アカデミアと迷っていると正直に伝えたら渋い顔をされたように感じて(笑)。気のせいだったかもしれませんが、それで大学教員の道に進む決心がついたような気がします。結果、助教のポストに就けたのは幸運だったと思っています。

 

――研究者となった今、先生の研究や、職業としての研究者の魅力は何でしょうか?

「最初はうまくいかないことも多いのですが、一個ずつ色々な実験ができるようになっていくこと、またその過程で色々工夫することが楽しいと感じます。いい結果が出た時の喜びはもちろんですが、悪い結果出た時にそれをもとに試行錯誤していくのも楽しみのひとつです。苦労したことと結果が結びついていく時に、楽しいなと実感しますね。

 

――工学の研究者として、ものづくりができることも魅力のひとつでしょうか?

「そうですね、自分がイメージしたものを自分で作っていくこと、『こういうものができたらいいな』というものを自分から作る・評価する・裏付けする・完成までもっていくという道順も、大きなやりがいのひとつです。そのための試行錯誤の過程や、データを集めていく過程も楽しみです。そう考えると自分は研究を楽しめる、研究に向いているタイプだと思います。」

 

――「研究に向いている」タイプとは、どのような人だと思いますか?

「例えば、自分のやったこと・考えた過程・結果・そこから導けることを全部説明してくれる学生を見ると、特に研究に向いているなと思います。個々人の適性もあるので無理強いすることはないですが、研究に向いている学生には研究者の道をおすすめしたいです。」

 三浦先生③

所属する近藤研と大江研で、学会を主催した際の集合写真

 

昨年末に出産、産休・育休を取得後、4月に職場復帰した三浦先生。現在は生活にメリハリをつけ、研究室メンバーの協力もあって、極力残業しないように心掛けているそう。

博士課程を目指す女子学生へメッセージ

――最後に、博士課程への進学を検討中の女子学生へのメッセージをお願いします!

「女子学生だと『工学』という字面だけで、なんとなく敬遠してしまう子も多いんじゃないかと思います。でも、実際入ってみると、工学だからできる、できないということはなくて、意外と柔軟なので、安心してめざしてほしいですね。特に高校生にはあまりイメージがつかないかもしれないですが、医療系、食品系など、工学から連想しづらいことでも、案外工学と繋がっていることがあるんです。やりたいことの大枠を若いうちに決めておいて、その上でいろんな分野が選べるというのを知ってほしい。その際には、工学部で幅広いことが学べるということも思い出してほしいです。」

面白い!を軸に、自分の興味に正直に進んできた三浦先生。工学の懐の深さを活用して、他分野との融合研究を楽しんでいるように感じられました。
三浦先生、ありがとうございました!

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