トポロジカル量子物質の新奇スイッチング/メモリー効果を室温で実現

電子工学専攻の 西嶋泰樹 博士課程学生(日本学術振興会特別研究員DC1)、安藤裕一郎 准教授、白石誠司 教授らのグループは筑波大学の 黒田眞司  教授グループと共同で、21世紀の新しい物質「トポロジカル量子物質」の一種である「トポロジカル結晶絶縁体」を用いて、そのトポロジカル性に由来する新奇なスイッチング効果を室温で実現することに成功しました。

「トポロジカル量子物質」とは、その電子状態がトポロジカルに「捻れた」物質であり、20世紀までに発見されてきた半導体・金属・磁性体などとは根本的に異なる性質を持つ物質です。2016年のノーベル物理学賞がこの研究分野の草分けとも言うべき研究に与えられたことは、トポロジカル量子物質の極めて高い重要性を示すものです。今回の研究では、このトポロジカル量子物質の一種であり「トポロジカル結晶絶縁体」と呼ばれる材料であるPb0.48Sn0.52Te(鉛スズテルル)を用いて、鉛スズテルルのトポロジカル性の現れである「ベリー曲率ダイポール」と強誘電性の協奏に由来するスイッチング効果とメモリー効果を室温に至るまでの温度領域で発見/実現しました。この成果はトポロジカル量子物質の電子素子への展開に新たな可能性を付与するとともに、同物質の応用への扉を開くものです。

本成果は20233211:00(日本時間)に米国学術誌である「Nano Letters」誌にオンライン掲載されました。

研究詳細

トポロジカル量子物質の新奇スイッチング/メモリー効果を室温で実現

研究者情報

書誌情報

タイトル

“A Ferroic Berry Curvature Dipole in a Topological Crystalline Insulator at Room Temperature”

(トポロジカル結晶絶縁体における室温での強誘電的ベリー曲率ダイポール)

著者

T.Nishijima, T. Watanabe, H. Sekiguchi, Y. Ando, E. Shigematsu, R. Ohshima, S. Kuroda, and M. Shiraishi

掲載誌

Nano Letters

DOI  10.1021/acs.nanolett.2c04900
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