易分解性結合を使わずにビニルポリマーを分解する画期的アプローチ ―側鎖の炭素−水素結合活性化をトリガーにして主鎖の炭素−炭素結合を切断―

京都大学大学院工学研究科 大内誠 教授、木村太知 同修士課程学生(研究当時)の研究グループは、(メタ)アクリルポリマーに対し、共重合によって少量のビニルエーテルを導入し、光(UV)照射による水素原子移動反応(HAT反応)を行うと、主鎖の炭素−炭素結合の切断を伴ってポリマーが分解することを見出しました。様々な実験から、HAT反応によってビニルエーテルユニットに含まれる酸素に隣接する炭素−水素結合からラジカル種が生成し、主鎖に転移したラジカル種が炭素−炭素結合の切断を伴いながら移動することで分解が起こっていると考えられます。難分解性であるビニルポリマーの主鎖にエステル結合などの易分解性結合を導入することで分解させる研究が活発化していますが、本研究はこのような易分解結合を導入せず、主鎖の頑丈な炭素−炭素結合を維持しながら、側鎖に導入したありふれた炭素−水素結合の活性化をトリガー(引き金)にして難分解性高分子を分解させた画期的な研究成果です。今後、ポリエチレン、ポリプロピレンなど、より汎用的に使われているビニルポリマーへの展開も期待されます。

本成果は2023626日(現地時刻)にドイツの国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」にオンライン掲載されました。

研究詳細

易分解性結合を使わずにビニルポリマーを分解する画期的アプローチ ―側鎖の炭素−水素結合活性化をトリガーにして主鎖の炭素−炭素結合を切断―

研究者情報

書誌情報

タイトル

Photocatalyzed HAT-Degradation of Vinyl Polymers: Cleavage of C-C Bond in Backbone Triggered by Radical Activation of C-H Bond in Pendant(ビニルポリマーの光照射HAT分解:側鎖C-H結合ラジカル活性化をトリガーとする主鎖C-C結合の分解)

著者

Taichi Kimura and Makoto Ouchi

掲載誌 Angewandte Chemie International Edition
DOI 10.1002/anie.202305252
KURENAI

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