キロアンペア級の交流電流を流せる高温超伝導集合導体SCSCケーブルを開発 ~交流損失低減でカーボンニュートラルや核融合への応用に期待~

電気工学専攻の雨宮尚之教授らは、古河電気工業株式会社(以下、古河電工)、古河電工グループのSuperPower Inc.と共同で、交流の大きな電流を流せ、内部で発生する摩擦発熱のような損失(交流損失)も小さいSCSCケーブル(エスシーエスシーケーブル)と名付けた高温超伝導集合導体を開発し、1キロアンペアの交流の電流の通電と、従来比十分の一となる交流損失の低減に成功しました。

従来のテープ形状をした薄膜高温超伝導線には、交流損失が大きいこと、実用で必要なキロアンペア級の電流を流せないこと、テープの面の方向には曲げ易いものの幅の方向には曲げにくく、多様な形のコイルに巻けないこと、といった短所があり、応用の障害となっていました。

雨宮教授の研究グループ(以下、京都大学の研究グループ)は、内部の超伝導薄膜を細く分割した薄膜高温超伝導線をコア(芯材)のまわりにらせん状に巻くことで、交流損失を小さくする技術を研究してきました。今回、らせんを多数重ねることにより大きな電流を流せるようにしたSCSCケーブルという集合導体を開発し、直径4ミリメートルのSCSCケーブルに1キロアンペアの大きさの交流の電流を流すことに成功しました。一般的な電線である銅線に比べ、数十倍の密度で電流を流したことになり、強い磁気を発生させるために役立ちます。また、SCSCケーブルに交流の磁界をかけて、従来のテープ形状の薄膜高温超伝導線に比べて、交流損失が十分の一になっていることを確かめました。SCSCケーブルは任意の方向に曲げられるので、多様な形のコイルに巻くこともできます。

航空機の電気推進用超伝導モーター、再生可能エネルギー大量導入時でも電力の安定的な供給を可能にする超伝導磁気エネルギー貯蔵装置などへの応用を通して、SCSCケーブルはカーボンニュートラルに役立つと期待できます。また、時間的に変動する大きな磁界を発生させる核融合炉のコイルにも応用できます。

本研究成果は、2023914日(中部ヨーロッパ夏時間)に第28回マグネット技術国際会議(フランス エクス・アン・プロバンスにて開催)にて発表されました。

研究詳細

キロアンペア級の交流電流を流せる高温超伝導集合導体SCSCケーブルを開発 ~交流損失低減でカーボンニュートラルや核融合への応用に期待~

研究者情報

書誌情報

タイトル

Fabrication, characterizations and conceptual design of Spiral Copper-plated Striated Coated-conductor cables (SCSC cables)”(スパイラル銅複合マルチフィラメント薄膜高温超伝導線ケーブル(SCSCケーブル)の作製・評価・概念設計)

著者

Naoyuki Amemiya1, Yusuke Sogabe1, Ryusuke Nakasaki2, Hisaki Sakamoto3, Satoshi Yamano2
1Kyoto University, 2Furukawa Electric Co., Ltd., 3SuperPower Inc.(雨宮 尚之1、曽我部 友輔1、中崎 竜介2、坂本 久樹3、山野 21京都大学、2古河電気工業株式会社、3SuperPower Inc.))

発表会議 4OrA3-6, The 28th International Conference on Magnet Technology (Aix-en-Provence, France, presented on September 14, 2023) (第28回マグネット技術国際会議(フランス エクス・アン・プロバンスにて開催)、4OrA3-62023914日発表)
DOI
KURENAI

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