薬剤耐性変異を獲得したタンパク質の不可逆阻害に成功 ―不可逆阻害剤開発のための新たな分子デザイン―

合成・生物化学専攻の浜地格教授、田村朋則講師、河野正晴博士課程学生らの研究グループは、同専攻の松田建児教授、東口顕士講師との共同研究により、タンパク質不可逆阻害のための新たな反応基を開発し、これが薬剤耐性変異を獲得したタンパク質の機能阻害に有効であることを実証しました。
化学反応によって「標的タンパク質に一度くっついたら離れない」不可逆阻害剤は、強力な薬効が期待できるため近年の創薬研究において大きく注目されています。一方、現在臨床で用いられている不可逆阻害剤の多くはタンパク質中のシステイン残基としか反応しないため、システインが別のアミノ酸に変異した薬剤耐性タンパク質には効果がなくなってしまうという課題がありました。こうした中、本研究グループはN-アシル-N-アリールスルホンアミド(ArNASA)基がリジン残基と反応可能であり、なおかつ血清含有培地などの生理的環境においても高い安定性を示すことを見出しました。さらにこの反応特性を活用し、薬剤耐性変異を有するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)に対する世界初の不可逆阻害剤の開発に成功しました。
本成果は、2023年11月21日に米国の国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」にオンライン掲載されました。

研究詳細

薬剤耐性変異を獲得したタンパク質の不可逆阻害に成功―不可逆阻害剤開発のための新たな分子デザイン―

研究者情報

書誌情報

タイトル

Lysine-reactive N-acyl-N-aryl sulfonamide warheads: Improved reaction properties and application in the covalent inhibition of an ibrutinib-resistant BTK mutant(和訳)リジン反応性N-アシル-N-アリールスルホンアミド反応基:改善した反応特性とイブルチニブ耐性BTK変異体の不可逆阻害への応用

著者

河野正晴、村川駿介、東口顕士、松田 建児、田村朋則、浜地格

掲載誌

Journal of the American Chemical Society

DOI

10.1021/jacs.3c08740

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